いまや"第六の栄養素"といわれる食物繊維(shutterstock.com)
ひと昔前まで食物繊維は、"食べ物のカス"としてあつかわれていた。栄養学的に見ると、消化されないし、ほかの栄養素を吸着して排出されてしまうので、役に立たないと考えられていた。しかし、いまや五大栄養素に並んで"第六の栄養素"といわれるまでにランクアップしている。
古来、小麦ふすまが便秘によいことは知られていたが、アメリカの医師でコーンフレークでもおなじみのケロッグさんが、食物繊維は腸内で肉が出す毒を減らすと提唱したのが1918年。その後、1960年代には、食物繊維と大腸がんの関連についての研究が始まり、70年代になると食物繊維の有益性が確かなものとなっていった。
食物繊維は消化されないので大腸まで運ばれる。そこで重要な働きをするのだが、そもそも大腸の機能は食物繊維の存在を前提としたもので、これが不足すれば大腸の機能不全につながるのである。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の役割
食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維がある。食品により含まれる割合はそれぞれだが、この2つは体内での働きが異なる。では、それぞれの食物繊維の威力を紹介しよう。
①便秘を改善し、腸内環境を整える
水溶性食物繊維は、腸内細菌により発酵分解され、短鎖脂肪酸を作る。これが腸内を酸性にして善玉菌を増やし、腸内環境を整える。
一方、不溶性食物繊維は、水を吸収し膨らむことで便を柔らかくするので、便秘の予防や改善に働く。また便の量や回数を増やすので、発がん性物質などが大腸粘膜と接触する時間を短くすること、そして発がん物質やアレルギー性物質、ダイオキシンなどの有害物質を吸着し体外に排出することで、大腸がんやアレルギー疾患の予防になる。
②血糖値の急な上昇を抑える
水溶性食物繊維は粘り気があり、胃から十二指腸への食べ物の移動がゆっくりになるため、でんぷんの消化吸収速度が遅くなる。その結果、食後の血糖値の急な上昇が抑えられ、インスリンの分泌も抑制される。これにより2型糖尿病のリスクが下がる。
③コレステロールの減量になる
水溶性食物繊維は小腸でコレステロールを吸着し排泄する。また胆汁酸を吸着して減少させるため、新しい胆汁酸を作るために原料となるコレステロールが使われ、体内コレステロールを減少させる働きもある。これにより心臓病のリスクが下がる。
④食べ過ぎによる肥満を防ぐ
食物繊維は消化管内で膨らんでカサを増やすので、食べ物が胃の中にとどまる時間が長くなる。これが満腹感をもたらし、食べ過ぎを防ぐ。