都内の高校生といえば、スマホを保有して、LINEなどのソーシャルメディアで四六時中情報交換をしている「情報強者」というイメージがある。しかし現実は、性知識が貧困な「情報弱者」だったのである。
木村好秀医師は、このような結果が出た原因として、「中学・高校教育の中で妊孕性(にんようせい=妊娠する力)について学ぶ機会がなかったことが考えられる。思春期からの教育で、妊娠・出産の適切な時期を周知させる必要がある」とまとめている。
先述したように「性教育は不要」という人がいる。「性とは本能であるから、自然に気づき学べる」という考えからだ。一見すると、この考えは説得力があるように感じる。
しかし、人間の性行動とはきわめて社会的な営みであることが、さまざまな研究から明らかになっている。人間はほかの動物と違って、本能による性行為をしていない。容姿、社会的地位、話す言葉、お互いの職業など、さまざまな要因を確かめあって、恋愛(または見合い、あるいは婚活)が成立し、その次に性行為がある。この恋愛をすっとばして、「発情したからセックスする」というのが動物の本能に根ざした性行為である。これを現代社会でひとりの人間が実行したら、性犯罪者として処罰の対象になることは明かだ。
メディアを通じて入手できる性についての情報は増えているが、若者が理解できるための適切な性教育の環境は整っていない――。これが今回の調査結果で明白になった。
男性は死ぬまで勃起し射精できる能力を維持できない、女性はいつか閉経し、妊娠する能力を喪失する、という大人にとってはあたり前のことさえも、子どもたちは勉強しなくてはわからない。人間は「本能がこわれた社会的」な存在だ。学ばなければ、生きることも、セックスすることもできない。
(文=編集部)