連載 更年期をのりこえよう!第3回

脳内ホルモンと自律神経の微妙な乱れから生じる更年期の不快症状

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 一方、ドーパミンは快感と多幸感(ユーフォリア)をもたらす神経伝達物質である。恋をするとドーパミンが放出されて幸福感を覚えることはよく知られている。ドーパミンが適度に分泌されているとき、脳は覚醒し、集中力が高まり、すべてに前向きとなる。しかし、多く分泌されればいいというものでもない。

 例えば、覚醒剤はドーパミンとよく似た働きをもつと同時に、ドーパミンの作用を増強することにより、強烈な覚醒効果と快感をもたらす。しかし、こうした働きが、結果的に人間の精神活動を混乱に陥れることから使用を禁止されているのである。

 また、セロトニンはノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑えて、心の落ち着きや安定感をもたらす神経伝達物質である。セロトニンの分泌が減少すると、人はやる気や集中力が低下し、イライラしてキレやすくなったり、寝つきが悪く不眠になったり、気持ちが落ち込んでうつ状態になったりする。

 しかし、うつ病の治療のためにセロトニン作動系の抗うつ剤を多量に服用したり、薬剤の相互作用によって脳内のセロトニン濃度が高まり過ぎると、今度は、発汗や心拍数の増加、吐き気、筋肉の痙攣、体の震え、頭痛、錯乱、昏睡などの、いわゆる「セロトニン症候群」と呼ばれる症状が出現する。

 つまり、脳内ホルモンは、増えすぎても減りすぎても心身のバランスが崩れて、人は容易に不安定な状態に陥ってしまうのである。

ホメオスタシスで更年期特有の不快な症状は次第におさまる

 ところで、脳の視床下部には下垂体を経由して卵巣へエストロゲン分泌の指令を送る最高指令室があることは前回述べた。ところが、ここには呼吸、循環、血圧、体温調節、内分泌、代謝といった自分の意思ではコントロールできない機能を制御する自律神経の最高指令室(支配中枢という)も存在している。更年期には、視床下部にあるエストロゲン分泌に関わる支配中枢の機能が乱れる余波を受けて、同じ視床下部に支配中枢をもつ自律神経にも乱れが生じて、発汗、のぼせ、冷え、耳鳴り、めまい、立ちくらみ、動悸といった、いわゆる自律神経の失調症状が出現するのである。

 つまり、更年期に出現する多彩な不快症状は、エストロゲンの低下だけではなく、脳内ホルモンのバランスの乱れや、自律神経の失調など、様々な要因が重なり合っておきているのである。

 しかしながら心配は無用だ。人間の体は順応性に富んでいて、健康を維持するために体内環境を一定に保とうとする働きがある。これをホメオスタシス(恒常性の維持)という。閉経後、数年経って、体がバランスを欠いた状態に慣れてくれば、更年期特有の不快な症状は次第におさまってくる。

 ご安心あれ。出口のないトンネルはないのである。


連載「更年期をのりこえよう!」バックナンバー

宮沢あゆみ(みやざわ・あゆみ)

あゆみクリニック院長。早稲田大学卒業後、TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て「あゆみクリニック」を開業。働く女性に配慮して夜間や土曜も診療しており、思春期から更年期までの女性のトータルケアに力を入れている。
あゆみクリニック」完全予約制。診療日:月,火,木 11:00~14:00 17:00~20:00 土 11:00~16:00

宮沢あゆみの記事一覧

宮沢あゆみ
難治性むちうち症からなぜ多くの不定愁訴がおきてしまうのか?
難治性のむちうち症を改善 後編 東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩医師

前編『画像診断できない難治性のむちうち症を独自の治療法で改善』

原因不明で治療法がなく多くの患者さんが回復をあきらめていた難治性のむちうち症。東京脳神経センターで進む独自の治療で、めまい、動機、吐き気などの全身症状やうつ症状などの不定愁訴が大幅に改善しているという。その具体的な成果についてお話を伺った。

Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし 理事長…

三橋純

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授…

西郷和真

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

横山隆