女性は閉経後、ホルモンバランスを崩すことで体調を悪くするケースがある。代表的なのが更年期障害だが、このほかにも女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減って起こる骨粗しょう症が知られている。
乳がんも閉経後にリスクが高くなるケースがあるので注意が必要だ。
米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がん予防のために乳房を切除したことで知られるように、乳がんを引き起こす遺伝子を持っている人は乳がんになるリスクが高くなるケースもあるが、それ以外にも乳がんのリスクと知られているのが閉経後の肥満。ところが最新の研究で、確かに閉経後の肥満は乳がんリスクを高めるが、特に日本人は実は閉経前でも肥満には注意しないといけないことが明らかになった。
欧州のがん専門誌Annals of Oncologyに発表された研究だが、国立がん研究センターの笹月静予防研究部長らが日本人を対象にした大規模な8つのコホート研究を統合解析して調べた。コホート研究とは一定の集団を追跡調査して疾病の発生率を調べ、要因と疾病に関連があるかどうかを明らかにする研究のことだ。
今回の解析で対象となったのは、調査開始時にがんの既往歴がない18万人以上の女性。平均約12年の追跡期間中に乳がんになった1783人について、診断時の状況に応じて閉経前乳がんグループ(301人)と閉経後乳がんグループ(1482人)に分類し、肥満指数BMI(Body Mass Index)による乳がんリスクを比べた。
それによると、閉経前乳がんグループ、閉経後乳がんグループはともにBMIが大きくなると乳がんのリスクが高かく、肥満は乳がんのリスクを高めることが分かったが、では、BMIが小さいとどうかというと、閉経後乳がんグループのリスクはBMIが小さくなるほど少なくなっていったのに対し、閉経前乳がんグループではBMIが小さくてもさほどリスクが少なくならないことが分かった。
●閉経前のリスクは欧米と異なる結果に
日本人の閉経前の乳がんは今回の研究のように閉経後の乳がん同様、BMIが大きくなることによるリスクの上昇がみられたが、欧米では逆にBMI30以上の群などでのみリスクが減少するということを示す研究結果などがある。
閉経前の乳がんについては、欧米と日本人とでは異なる結果になったわけだ。
これについて研究チームは、過体重や肥満の女性は無排卵やエストロゲンレベルが低いなどの傾向があり、乳がんには予防的となることが考えられる一方で、アジア人女性の場合は極端に太っている人が少なく予防的な効果がみられなかったことや、欧米とアジアに多い乳がんのタイプの違いなどによることが考えられるとしている。
研究グループは「乳がん予防の観点からは痩せているほうがリスクが低いことが示された。しかし、痩せに至るような栄養不足は免疫力を弱めて感染症を引き起こしたり、血管壁がもろくなり脳出血を起こしやすくすることも知られている。総合的な健康にも配慮し、中高年女性のBMIの目標値としては21以上25未満が推奨される」とする。肥満は万病の元といわれるが、かといって痩せ過ぎもよくない。やはり、適度な体型を維持することが重要なようだ。
(文=編集部)