あらため注目される日常の運動習慣 Iakov Kalinin/PIXTA(ピクスタ)
運動不足は、骨粗しょう症や筋力不足による転倒など、さまざまな病気を引き起こしやすくする。だが、夏場はなかなか体を動かす気になれないものだ。連日の猛暑では、熱中症のリスクも高まるため、ますます運動から遠ざかっている人も多いだろう。
しかし、運動不足は夏バテを招き、代謝低下によって、冷たいものの取り過ぎや冷房の効いた部屋に篭もりがちな体の血行も滞らせる。適度な運動は、むしろ疲労を回復する効果もある。ストレス解消、気分転換などにも有効だ。そのため、運動が日常習慣になっていない人は、うつになりやすいともいわれている。
運動不足が長期化すると、20代、30代から知らず知らずのうちに「運動器」の機能を低下させる。高齢になってから、突然落ちるわけではないのだ。デスクワークでほとんど身体を動かさない人であれば、年齢にかかわらず「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」(略称ロコモ)の兆候が現れるケースは少なくない。
わずか2週間でも運動をしないと、筋力が大幅に低下
ロコモとは、筋肉、関節、軟骨、椎間板などの運動器に障害が起こり、歩行や日常生活に支障をきたしている状態だ。その前段階、加齢などによる筋肉の低下は「サルコペニア」と呼ばれる。サルコ(sarco:筋肉)がペニア(penia:減少)するという意味だ。
日本ではサルコペニアの明確な定義はないが、現在は、欧州のEWGSOPという作業部会で提案された「進行性かつ全身性の筋肉量と筋力の減少によって、身体機能障害や生活の質(QOL)の低下や死のリスクを伴うもの」という定義が定着している。
いずれも、運動不足の人が負うリスクのようなイメージだった。ところが先日、体力のある人でも、「2週間」運動をしないと筋力が大幅に低下することが新たな研究で示された。
2週間という短期間でも、若い人で約30%、高齢者では約25%の筋力低下が認められた。また、元の筋量が多い人ほど、ケガ、病気、休暇などで運動を休んだ場合に失われる筋肉量も多いことが明らかにされた。