インタビュー 超高齢社会の“人生ラスト10年問題“に向きあう 第2回 (社)チーム医療フォーラム代表理事 秋山和宏医師

「人生ラスト10年問題」対策の切り札! 認知症予防にも繋がる国民総筋肉量(GDM)とは?

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夫婦の人生ラスト10年問題とは?shutterstock.com

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 GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)は、国の経済規模を表すおなじみの指標だが、秋山医師は、人生ラスト10年問題の切り札は、GDM(Gross Domestic Muscle:国民総筋肉量)だと言う。

「人生ラスト10年問題の内容を具体的に見ていくと、まず歩けなくなり、次に食べられなくなり、そして認知できなくなり、という順番になることが多いのです」
 
 この流れを食い止めるのに有効なのが、筋肉量を減らさないことなのだと言う。
「筋肉量が多ければ歩けなくなることを防げます。さらに、食べたり飲んだりする舌の筋肉は骨格筋(骨を動かす筋肉)の量に左右されることがわかってきました。筋肉量を維持し、歩き続けることが、食べ続けることにつながり、さらに認知症の予防にもつながります」
 
 加齢などによる筋肉の低下は、サルコペニアと呼ばれる。サルコ(sarco:筋肉)がペニア(penia:減少)するという意味である。

「ある研究者が、ラスト10年問題に直面している高齢者の介護保険費と、後期高齢者の筋肉の減少量から、筋肉が100グラム減ると介護保険費がいくらかかるかを試算しました。それによると、75歳の男性で100グラムの筋肉は約16.5万円に相当します。75歳の女性では約21.4万円です」
 
 ちなみに高級ブランドの神戸牛が、100グラム3,500円ほどであることを考えれば、高齢者の筋肉は相当に価値が高い。このように筋肉量に価値を見出し、国民の筋肉量で健康レベルを表そうというのが、GDM(国民総筋肉量)である。GDMが高ければ、その国の健康レベルが高いということになる。

「特に、ラスト10年問題の年齢にさしかかったら、貯金ならぬ、貯筋をすることで、歩けなくなる、食べられなくなる、認知できなくなる、の3つの節目を緩和することが期待できます」

運動療法と栄養療法の合体「メディカル・ウォーキング」

 GDMを増やすために、秋山医師が普及に取り組んでいるのが、メディカル・ウォーキングだ。

「メディカル・ウォーキングは、運動療法に栄養療法を加味した医学的知見に基づくウォーキングです。たとえば、歩くスピードが寿命に影響することがわかっています。75歳~84歳では、歩行速度が0.1m/秒早くなるごとに、死亡リスクが12%低くなるという論文もあります。そこで、メディカル・ウォーキングでは、速歩(いつもより少し早く)の習慣をつけることをおすすめしています」
 
 またウォーキングは1日1万歩が目安と言われるが、せっせと歩いても1時間以上かかってしまうことが多く、日常生活の中でそれだけの時間はなかなかとれない。そこで秋山医師は言う。

「最近の科学論文によれば、歩数を1日2000歩増やせば心筋梗塞などの病気が8%低下するということが明らかになっています。たとえば1日3000歩しか歩かない人でも2000歩増やせばリスクが8%減るのですから、まずはプラス2000歩を目指してみましょう」

運動して何も摂らないと筋肉が減ってしまう

秋山和宏(あきやま・かずひろ)

一般社団法人チーム医療フォーラム代表理事、東葛クリニック病院副院長。1990年、防衛医科大学校卒業。東京女子医大消化器病センター、至誠会第二病院を経て、1999年より東葛クリニック病院勤務。2010年より副院長。「参加する医療で社会を良くする」ことを目指し一般社団法人チーム医療フォーラムを設立。著書:『医療システムのモジュール化』(白桃書房)、『チーム医療のソコヂカラ』(Kindle版)など。ヘルスウオーキング指導士、医学博士、経営学修士(MBA)、日本消化器外科専門医、日本外科学会専門医、日本静脈経腸栄養学会評議員、日本褥瘡学会評議員

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