片頭痛のメカニズムは、まだ解明され尽くされてはいないshutterstock.com
今回は片頭痛の起こるメカニズムについてお話ししましょう。といっても現在でも片頭痛の起こる機序は、完全に明らかではありません。ただし、いくつかの科学的結果から導かれた仮説が考えらており、そのことについて説明してしたいと思います。
片頭痛には大きく、脳血管や硬膜など末梢性に起因するという考えと、脳そのものにより三叉神経脊髄路核が活性されて生じているものではないかという考えが知られています。これら仮説では、各種の神経ペプチドが重要な役割を演じています。また片頭痛において、頭痛の前兆における閃輝暗点(キラキラと目の前で光る現象)は、皮質拡延性抑制(cortical spreading depression;CSD)と呼ばれる後頭葉(脳の後ろ側)から始まる、ゆっくりとした神経の興奮様式が関連していると考えられています。
図1
片頭痛は図1のように、何らかの刺激が加わると、その刺激を関知して、脳血管あるいは三叉神経終末の活性化が起こり頭痛を起こすと考えられています。また、脳幹に頭痛の起源があると考えている医学者もいます。
これら脳の刺激を伝える物質として、神経ペプチドと呼ばれる一種のホルモンが関与していると考えられています。これら神経ペプチドには、ヒスタミン、セロトニン、グルタミン酸、ドパミン、オレキシン、メラトニン、カルシトニン関連ペプチドなどの物質が作用しているとされています。
これらの関係を科学的根拠にもとづいて、すべてを明らかに説明できる学説はありません。しかし、これら神経ペプチドへの注目は、治療薬の開発とともに注目されるようになっています。今回はその中でも片頭痛に重要な役割である「セロトニン」について述べたいと思います。
セロトニンが片頭痛を引き起こす原因か?
1960年代頃から、セロトニンと片頭痛の関係は注目されてきました。
セロトニンはストレスホルモンの一種で、感情やストレスを感じるときに放出され、血管を収縮させる作用があります。これは交感神経刺激作用によると考えられます。
しかし、1990年代に片頭痛の治療に高い治療効果のある「トリプタン」が使用されるようになったことで(日本では2000年以降)、脳血管の収縮作用が片頭痛の治療に有効であると考えられるようになりました。すなわち、トリプタンは、セロトニン受容体(5-HT受容体)の作動薬(アゴニスト)であり、セロトニンと同じような薬理作用を持つとされています。
そのため、高い治療薬であるセロトニン受容体と片頭痛の関連について、多くの研究がされています。セロトニン受容体には11種類ありますが、その内でもトリプタンは「5-HT1D型」及び「5-HT1B型」に作用すると考えられています。これらの受容体は、脳血管を収縮させることで治療効果を示すと考えられるようになりました。そこから、脳血管の拡張が頭痛をきたしていると考えられるようになる。
これが脳血管、三叉神経終末を起源とする仮説の根拠です。また、三叉神経が刺激されることで神経ペプチドが放出されるため片頭痛をきたすという説もあります。
今回、簡単にセロトニンと片頭痛の関係について説明しました。専門的には、単純化した図1で説明することはできませんが、この紙面では理解しやすいように単純化しています。