これが60種類以上の栄養素を兼ね備えたスーパーフード「スピルリナ」
約35億年も前に地球上に誕生した世界最古の植物である藻の一種「スピルリナ」。同じ藻類のユーグレナ(ミドリムシ)とともに、世間の注目を集めているスーパーフードだ。
タンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンA群B群、鉄分、葉緑素、βカロチン、ガンマ・リノレン酸など60種類以上の栄養素を兼ね備え、また身体の維持に必要な栄養素をほとんど含んでいるため完全食とも呼ばれている。
免疫力アップ、便秘の改善、アレルギー抑制、貧血改善、高血圧・動脈硬化予防、高血圧・脂質異常症の改善、腎機能の保護作用、ダイエット、肩こり・偏頭痛の緩和、がんの抑制、育毛などさまざまな効果があるといわれ、他のスーパーフード同様多くの肯定的な体験談がネット上に掲載されている。
そのなかでも目を引いたのが「肩こり・偏頭痛の緩和」だ。長年の頑固な肩こりと偏頭痛に悩まされ、湿布薬や頭痛薬、マッサージ、整体、チタンネックレスなど多くのものに手を出してきた筆者だが、どれも効果は長続きしなかった。スピルリナを飲んだら緩やかでも改善が得られるのか。そんな思いから、化粧品や健康食品を扱う大手通販会社から商品を購入した。
750粒入り約1800円。アルミパックを開けると、濃い緑色の錠剤からクロレラのような青臭い匂いがする。1日の目安量は10粒~25粒。直径0.9mmほどもあり、嚥下機能に問題がなくても15粒以上を一度に飲むのはつらそうだ。
そのため、最大目安量の約半分の12錠を40日間、夕食後に服用した。
"期待できる"効果のうち、ヒトに関する有効データはほぼない
客観的な数値及び主観的感想は以下の通り。
●体重、体脂肪、内臓脂肪レベル、体筋肉率、基礎代謝量、血圧、胴囲:ほとんど変化なし
●開始後約2週間、便が緑色に。また、その後も数週間に渡り、腹部が張っているのにお腹を壊すという状態が続いていた。便の量は変化なし。
●肩こり・偏頭痛:改善なし
●味と匂いに強い癖があり、粒が大きく飲み込むのに苦労するため、服用を継続することは大きなストレスだった(食事前に服用すると胃で水分を吸収してダイエット効果があるそうだが、味と匂いから食後に服用)。
●触ると手に緑色の粉がつく。
これらは個人の結果、感想であるが、総合的に見てネガティブな結果となった。当然、人によって合う・合わないがあり、効果を実感している人もいるだろう。だが、あくまでも健康"補助"食品。ステマ記事や提灯記事を信じて過度な期待は寄せないほうがよい。
上述のように、高血圧や脂質異常症の改善、抗がん作用、腎機能の保護作用、減量効果などが謳われているが、国立健康・栄養学研究所の「安全性、有効性情報」によると、スピルリナのヒトでの有効性については信頼できるデータは報告されていないという。
また、スピルリナには放射能の体外排出に効果があるという説もあるが、厳密な効果の検証は行われていないとのこと。2011年大震災の数ヵ月後に、「スピルリナは放射能排出に効能がある」との宣伝文句を使用し販売した業者が、薬事法違反で逮捕されている。
なお、厚生労働省の情報提供用のパンフレット「健康食品の正しい利用法」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf)には、健康食品の選択や使用に関する注意事項などが記載されている。スピルリナに限らず、それらに関する記事や体験談は誇張されているものが多いので、一度こちらも読んでみるとよいだろう。
健康のために飲み始めたスピルリナだが、思わぬストレスを覚えた今回の体験。スピルリナ自体は高価なものではなかったが、たとえ高い健康食品を買っても、自分に合わなかったら途中でやめる勇気も必要である。
(文=吉永くま)