必要な油(脂肪)をバランスよく shutterstock
「メタボリックシンドローム」「メタボ」――。日本で「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の診断基準が作成されたのは10年前(2005年)。今では、すっかり身近な言葉として定着しました。
生活習慣病のリスクを高めるメタボリックシンドロームは、単に太っていることではありません。内臓脂肪は、皮下脂肪とは別のもので、やせている人でも多い場合があります。
厚生労働省の平成25年「国民健康・栄養調査」によると、女性の肥満者の割合は20.3%に対して男性は28.6%と高く、男性では40代が最も多いとのこと。ところが、ダイエット志向の高まりのせいか、日本人の摂取カロリーは近年減り続け、現在は終戦直後並みになっています。
終戦翌年の1946年、日本人の平均摂取カロリー(1日)は1903㎉。主なエネルギー源は穀類やイモ類、野菜類でした。1958年にはインスタントラーメンが登場、高度経済成長期の1965年には2184㎉までアップしました。
続いて1968年にレトルトカレー、1971年にカップラーメンが登場。1975年にはピークの2188㎉に。油脂や砂糖の摂取もピークに達しました。ところが1980年から漸減し、2008年には1898㎉と終戦翌年を下回ったのです。
それでも、生活習慣病が増加傾向なのはなぜなのでしょう。
終戦直後にくらべ脂質の摂取量が増大
終戦直後と現在で最も大きく違うのは、脂質の摂取量。1947年は1日あたり14~15g程度でしたが、2010年には54gまで増えました。
問題なのは、入手しやすい加工食品は、トランス脂肪酸を多く含むマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングを原料とするものが多いということです。トランス脂肪酸は、天然の植物油にはほとんど含まれず、一定量を摂取すると心臓疾患のリスクを高めるといわれ、使用を規制する国が増えています。
必要な油(脂肪)をバランスよく摂っていますか?
一方で、良質な油(脂肪)は積極的に摂る必要があります。これまで、脂肪はカロリーが高く、「コレステロールの摂りすぎは体に悪い」というのが共通認識でした。しかし最近、「十分な科学的根拠がない」として、コレステロールの摂取基準をアメリカと日本で撤廃しました。
脂肪は、栄養素を取り込む、老廃物を排出する、細菌やウイルスの侵入を防ぐ、細胞同士の情報を伝達するホルモン様物質の材料になるなど、大切な役割を果たします。また、細胞の門番ともいえる細胞膜の材料になります。
脂肪は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに大きく分かれます。飽和脂肪酸は、肉、乳製品など動物性の脂肪に多く含まれています。不飽和脂肪酸は、植物の油や魚の脂肪に多く含まれます。
さらに不飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸(オメガ3系・オメガ6系)と一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)に分けられます。
脂肪酸の体内の働きのバランスをとるには、「飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸」が「3:4:3」の割合で、多価不飽和脂肪酸は「オメガ3系:オメガ6系」が「1:4」の比率がよいとされています
特にオメガ3とオメガ6はどちらも体内では作り出せないため、食事で補わなければなりません。この必須脂肪酸が不足して摂取バランスが崩れると、身体の機能は大きく狂います。摂取バランスが大切なのは、それぞれの働きに関係があるからなのです。
多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)
オメガ3系:亜麻仁油、えごま油、青魚の油など
主な作用:アレルギー抑制、炎症抑制、血栓抑制、血管拡張
オメガ6系:べにばな油、コーン油、ごま油、サラダ油など
主な作用:アレルギー促進、炎症促進、血栓促進、血液を固める
一価不飽和脂肪酸
オメガ9系:オリーブ油、キャノーラ油、パーム油など
主な作用:LDLを下げる
2つの必須脂肪酸は、ともに体内で重要な生理作用を果たします。ところが、普段の食事を思い出してみてください。ダントツにオメガ6系の油を口にしていませんか。近年の欧米型の食事では「1:10~40」にも及ぶ場合があるそうです。
炒め物などの加熱調理をする場合は、酸化しにくいオメガ9系の油を使ったり、意識的にファストフードや揚げ物などを控けて良質なオメガ3系の油を摂りましょう。脂質の摂取バランスを見直すだけで、アトピー性皮膚炎や花粉症が緩和したという報告もあります。
ただ、オメガ3は熱に弱く、加熱すると酸化してしまいます。そのまま摂るのが望ましいのですが、えごま油も亜麻仁油はややクセがあり食べにくいかもしれません。1日に小さじ1杯程度をサラダやマリネのドレッシングに混ぜたり、味噌汁や野菜ジュースにまぜたりと工夫して摂るとよいでしょう。新鮮な青魚を積極的に摂るのもおすすめです。