高カロリーで敬遠されがちのナッツ類は意外なオススメ食品
年を重ねるごとに増える体重......。「年だから仕方がない」と諦めている人に、興味深い研究が報告された。カロリーが同じ食品でも、その質に違いがあり、一部の食品は一般的に考えられているよりも太りにくいことが明らかにされたのだ。
ナッツ類・ピーナッツバター・魚・ヨーグルト・低脂肪チーズをよく食べる人では、男女ともに体重が低下する傾向がみられた。一方、「健康によくない」とされる食品、卵・高脂肪のチーズ・全乳などは体重に変化をもたらさない。
逆に体重を増加させるのは、砂糖入り飲料や精製炭水化物、またはでんぷん質の炭水化物(精白パン、じゃがいも、白米など)であることが判明した。
米タフツ大学およびハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)の主任研究員であるDariush Mozaffarian氏らによると、成人では食事の「血糖負荷(GL)」が高いほど体重が増える。血糖負荷は、食事に含まれる炭水化物の量と質の両方を評価する数値だ。
たとえば、精白小麦粉のベーグルのGLは約25単位であるのに対し、キノア(全粒穀物)1人前のGLは13単位、ヒヨコマメ1人前のGLはわずか3単位だ。
今回の研究では、1日あたりの血糖負荷が50単位(ベーグル2個に相当)増えるごとに、4年間で体重が1ポンド(約450g)増えることが明らかにされた。
卵やチーズなどの食品は、精製炭水化物やでんぷん質の炭水化物の摂取量が高い場合のみ、体重増加と関連していた。赤肉や加工肉も体重増加に関連するが、血糖負荷が抑えられている場合は害が少ないことがわかった。
『American Journal of Clinical Nutrition』(オンライン版)に掲載された今回の知見は、約12万1000人の米国の医療従事者から取得した24年間の食事情報に基づいている。研究開始時は、被験者はいずれも健康で平均体重は正常だった。
健康的な体重維持は「カロリーの考慮」だけでは不十分
研究の結果、体重は時間の経過とともに徐々に増えていくものの、タンパク質や炭水化物の質によってリスクは異なることがわかった。全体のカロリー摂取量をはじめとする生活習慣上の因子を考慮しても結果は同じだった。
このことからMozaffarian氏は、「長期にわたって健康的な体重を維持するにはカロリーを考慮するだけでは不十分だ」とコメント。「カロリー量」が消費者に誤った印象を与えることを同氏は懸念している。たとえば、市販のサンドイッチが加工肉と精製炭水化物を使ったものでも、カロリーが低ければよい選択(太らない)だと思い込んでしまうことを危惧している。
一方で、米国栄養・食事療法学会(AND)の広報担当で米サウスフロリダ大学(タンパ)助教授のLauri Wright 氏は、タンパク質・炭水化物・脂肪の質が重要だとの点に同意するものの、「カロリーを軽視はしないでほしい」と強調する。体重が溶けてなくなる「魔法の薬」のような食品は存在せず、「悪い」食品を避けるだけで体重増加を回避し、健康を維持できるわけではないという。
今年、米国人の食生活に関するガイドライン(2015年版)には、「食事によるコレステロール摂取と(動脈硬化などの病気の危険を増すこともある)血清コレステロールの間に明らかな関連性はない」との見解が示された。この「コレステロールは過剰摂取を心配する栄養素ではない」という報告は衝撃的だった。いわゆる「カロリー信仰」は、さまざまな研究によって揺らぎはじめている。
(文=編集部)