連載第5回 ありがとうの心が通う、幸せ介護食

いつもの介護食に「春」を取り入れて......母がはしゃいだ「菜種ご飯」

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 脳梗塞で倒れて生死の境をさまよった母。まだまだ介護を必要としているものの、隔日のデイサービスを楽しむまでに回復してきている。

 デイサービスがない日の母のスケジュールは、午前中いっぱいトイレタイム。昼食後は少し横になり、目が覚めると私と一緒に買い物に行ったり、散歩したりしている。よほど調子が悪くないかぎり、じっと家にいるのは嫌なようだ。

 日差しも暖かく、春の訪れを感じさせるある日のこと。梅の開花を知らせる新聞の梅だより欄に、わが家の近くにあるお寺の梅が七分咲きだと書かれていたので、さっそく母を連れて見に行くことにした。

 お寺の梅園の駐車場から参道に向け、母の腕をしっかりと抱きかかえるようにしながら、一歩一歩ゆっくり歩く。やがていい香りがしてきて、見事に咲いた紅白の梅と出会った。梅の可憐さと香りにすっかりご機嫌になった母は、「きれいねえ。いい香りねえ」と、花に顔を近づけながら匂いをかいでいた。

 梅を堪能した後は、いつものように近くの喫茶店でひと休み。母に、「今日の夕飯は菜種ご飯を作るけど、食べる?」と聞くと、「食べる、食べる」と大はしゃぎ。いつものおかゆのご飯に飽き飽きしているのだろう。

早速、菜種ご飯をつくる

 菜の花は柔らかくなるまで茹で、1㎝くらいの長さに切れば、歯の悪い人や、飲み込む力がよほど弱い方を除けば、形を残したまま、食べることができる食材だ。

 目で見て菜の花ということがわかり、春を感じられる。きれいな彩りが食欲をそそる菜種ご飯ができ上がった。

 母は、たくさん歩いたのでおなかがすいていたのだろう。「きれいね。春やね」と言いながら、うれしそうに食べていた。
 

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緑の菜の花に黄色の煎り卵を添えて春ご飯

「菜種ご飯」の作り方

1.米を水に浸し、塩と酒を加えて混ぜ合わせたら昆布を乗せる。いつもと同じ水加減。

2.茹でた菜の花を長さ2cmに切り、薄口醤油をかけ合わせてから絞る。

3.チリメンジャコはお湯をかけて軟らかくしておく。

4.塩と砂糖を少しずつ入れた卵で、煎り卵を作る。

5.ご飯が炊き上がったら昆布を取り除き、大きめのボウルなどに移し、菜の花、チリメンジャコ、煎り卵を加えてざっくりと混ぜ合わせる。


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横田節子(よこた せつこ)
家庭料理、介護食研究家。1953年大阪生まれ。2000年秋、同居中の実母が脳梗塞で倒れ、介護のため、自宅での料理教室を閉鎖。2005年、母の介護中、母が食べる様子をヒントに『介護しながら作る介護食』(日本経済新聞社)を出版。同書の出版以来、介護食に関する講演、講習会、取材が多数。
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