脳梗塞で倒れて生死の境をさまよった母。まだまだ介護を必要としているものの、隔日のデイサービスを楽しむまでに回復してきている。
デイサービスがない日の母のスケジュールは、午前中いっぱいトイレタイム。昼食後は少し横になり、目が覚めると私と一緒に買い物に行ったり、散歩したりしている。よほど調子が悪くないかぎり、じっと家にいるのは嫌なようだ。
日差しも暖かく、春の訪れを感じさせるある日のこと。梅の開花を知らせる新聞の梅だより欄に、わが家の近くにあるお寺の梅が七分咲きだと書かれていたので、さっそく母を連れて見に行くことにした。
お寺の梅園の駐車場から参道に向け、母の腕をしっかりと抱きかかえるようにしながら、一歩一歩ゆっくり歩く。やがていい香りがしてきて、見事に咲いた紅白の梅と出会った。梅の可憐さと香りにすっかりご機嫌になった母は、「きれいねえ。いい香りねえ」と、花に顔を近づけながら匂いをかいでいた。
梅を堪能した後は、いつものように近くの喫茶店でひと休み。母に、「今日の夕飯は菜種ご飯を作るけど、食べる?」と聞くと、「食べる、食べる」と大はしゃぎ。いつものおかゆのご飯に飽き飽きしているのだろう。
早速、菜種ご飯をつくる
菜の花は柔らかくなるまで茹で、1㎝くらいの長さに切れば、歯の悪い人や、飲み込む力がよほど弱い方を除けば、形を残したまま、食べることができる食材だ。
目で見て菜の花ということがわかり、春を感じられる。きれいな彩りが食欲をそそる菜種ご飯ができ上がった。
母は、たくさん歩いたのでおなかがすいていたのだろう。「きれいね。春やね」と言いながら、うれしそうに食べていた。
緑の菜の花に黄色の煎り卵を添えて春ご飯
「菜種ご飯」の作り方
1.米を水に浸し、塩と酒を加えて混ぜ合わせたら昆布を乗せる。いつもと同じ水加減。
2.茹でた菜の花を長さ2cmに切り、薄口醤油をかけ合わせてから絞る。
3.チリメンジャコはお湯をかけて軟らかくしておく。
4.塩と砂糖を少しずつ入れた卵で、煎り卵を作る。
5.ご飯が炊き上がったら昆布を取り除き、大きめのボウルなどに移し、菜の花、チリメンジャコ、煎り卵を加えてざっくりと混ぜ合わせる。