連載第10回 いつかは自分も……他人事ではない“男の介護”

2週間誰とも話さない独居男性高齢者が17%! 孤立で悲劇が起きる前に"新しい連帯と相互支援"を

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全く新しい市民の連帯や相互支援が孤立を防ぐ Violin/PIXTA(ピクスタ)

 家のことは一切妻に任せきりで、料理をしたこともなければ、靴下がどこに収納されているかもわからない。こんな昭和的な男性も、介護が始まれば生活は一変する。

 入浴・排泄・移動といった介護の困難はもちろんだが、家事スキルのない男性にも炊事・掃除・洗濯・買い物などの慣れない家事を否が応でもこなさなくてはならないのだ。

 特に仕事人間だった男性は、地域とのつながりが薄く、地域コミュニティに入るという発想もない。被介護者から四六時中目が離せずに一人で頑張り続け、自由になる時間が全くなくなり疲弊する介護者もいる。

 「家長だから」などという規範や自負が自らを追いつめ、過剰な責任を呼び込む。まじめな人ほど弱音を吐かずに、誰にも頼らず一人ですべてを抱え込み、葛藤を深めることが多い。

 家計の不安にもさらされる。目標を設定して成果を追い求めるビジネスモデルのような介護スタイルが、社会との関わりを疎遠にし、男性介護者を孤立に向かわせるのだ。

 こうした介護者の孤立が、ともすると虐待や殺人といった悲劇に向かわせることもある。

2週間誰とも話さない独居の男性高齢者17%

 

 孤立を深めているのは、男性介護者だけではない。すでに高齢者世帯の4分の1が一人暮らし世帯(厚生労働省「65歳以上の高齢者のいる世帯の構成割合」)なのだ。

 厚労省によればその数は600万人を超えると推計されている。「朝になって目が覚めへんかったら......」。毎日をこんな気持で送っている単身の高齢者もいる。唯一の外出の機会がデイサービスの利用だという。

 週1回のデイサービスの日は「パッと社会に出た気になる」そうだ。デイは介護施設というだけでなく、むしろ「社交場」なのだとあらためて教えられた。

 「生活と支えあいに関する調査」(社会保障・人口問題研究所、2013年)によると、一人暮らし高齢者のうち2週間ほとんど誰とも話をしない人は男性で17%を占め、女性4%に比べて際立っている。

 一人で暮らす高齢者はすでに600万人。20年後には男性の6人に1人、女性では4人に1人になるという。未婚者、離婚者は増え、夫婦添い遂げたとしても死別は避けられない。高齢者の孤立にかかわるテーマはさらに広がるに違いない。

どうする? 一人暮らしの高齢者へのサポート

 

 一人暮らしの高齢者を対象にしたサービス事業が始まっている。京都の老舗の喫茶店が、接客業のノウハウを生かしてシルバー産業に進出し社会貢献を目指しているという報道にも出会った。

 その名も「もしもしサービス」。毎朝決まった時間に高齢者の家に電話をかけ、体調の変化や食事の有無、服薬などを2分間の会話を通して確認するというもの。利用者の一人は「これまでは話し相手もなく一人しょぼんとしていたけれど、今は毎朝起きるのが楽しみ」と話している。
 
 買物難民というフレーズも現代のキーワードだ。近くの商店街がなくなり、公共交通網もなくなっていくなか、心身機能の弱くなった高齢者が日常生活を維持するための買い物に不自由するという現実がある。

 京都市東山区では、地元女子大学と連携して「買い物応援団」という活動が始まった。東山の麓、アップダウンの激しい地域で、買い物にも出かける事にも困っている高齢者を地域や女子大生がサポートする。

 必要な生活品を購入するということだけではない。地域や若い世代との交流もある、イベントとしても楽しみになっていることだろう。

 加齢や介護にまつわる孤立は、全く新しい市民の連帯や相互支援というケアを内蔵したコミュニティを創り出すきっかけになるだろうか。


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津止正敏(つどめ まさとし)
立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。
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