連載第4回 グローバリズムと日本の医療

ゴールデンウィークに海外から薬剤耐性の赤痢菌が流入、深刻な事態に!?

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あらゆる病原菌の耐性菌が人類を脅かすshutterstock.com

 ヨーロッパ人が新大陸にやってきたとき、そこにはすでに先住民(インディアン)が大勢住んでいた。ヨーロッパ人とインディアンの壮絶な戦いにヨーロッパ人が勝利し、現在のような形になった、というのは真実ではない。インディアンは戦争に負けたのではなく、病原菌に敗れたのだ。インディアンに免疫がなかった天然痘、腸チフス、コレラなどの感染症がヨーロッパ人によって新大陸に持ち込まれ、インディアンが激減したと言われている。こんなことが日本で起こらないとも限らない。
 
 これは昔話で、科学の発達した現代ではあり得ない、と言い切ることはできない。1928年、イギリスのフレミングが偶然世界初の抗生物質であるペニシリンを発見。この抗生物質の発見により、結核、腸チフス、パラチフス、赤痢などの感染症に対処することができるようになった。もしインディアンが抗生物質をもっていたならば、現在のアメリカはなかったかもしれないのだ。
 
 しかし、抗生物質を使い続けるとそれに耐性をもつ耐性菌が登場する。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、世界では毎年少なくとも200万人が耐性菌の感染症に苦しみ、2万3000人以上が死亡しているという。
 

アメリカやカナダで耐性のある赤痢菌由来の患者が急増

 これは発展途上国だけの問題ではなく、アメリカ国内でもペンシルバニア、マサチューセッツ、ニューヨークで耐性もつ赤痢発症が大きな問題になっている。CDCによると、2014年5月から2015年2月の間に、強い抗菌力をもつ殺菌性で一般的によく使われるシプロフロキサシンに耐性のある赤痢のケースが157件あった。カナダでは2009年には耐性のある赤痢のケースは5%程度だったが、5年後の2014年には14%に増加していた。世界では毎年1億人ほどの人が赤痢にかかり、60万人ほどが死亡しており、現在でも恐ろしい疾病のひとつだ。最近のアメリカ国内の赤痢の場合、その約半分のケースは海外旅行者由来だった。つまり、外からアメリカ国内に耐性菌が持ち込まれたのだ。
 
 グローバル化が進むことにより、人の往来が大変スムーズになってきた。日本からも毎年多くの人が海外旅行をし、外国人が日本に来る。観光庁によると、2013年の訪日外国人旅行者数は1036.4万人、日本人海外旅行者数は1747万人。大手旅行会社のJTBは、今年のゴールデンウィーク期間中に56万人余りが海外旅行に行くと推定している。

 ゴールデンウィーク終了後には帰国した人たちが職場へ、学校へ、幼稚園へ、保育所へと戻っていく。細菌性赤痢の場合、潜伏期間は12~96時間で、感染力が極めて強いものなので、今年、耐性のある細菌性赤痢を海外で感染した人を通じて、ゴールデンウィーク明けに広まる可能性も否定できないま。耐性のある細菌に人類が対処できなくなれば、どうなるのだろうか。
 
 私たち1人ひとりができることもある。赤痢は赤痢菌が食物や水を通じて口からはいることによって感染する。予防法は入念に手洗いをすることだ。トイレに行って石鹸でしっかりこすり、流水で手洗いをするというのは基本中の基本だが、家の外、特に海外では石鹸が備え付けられていなかったり、流水がなかったりということもあるだろう。そのような時には、携帯用の消毒剤も必須だ。さらに、海外では水と食事に細心の注意を払うこと。ゴールデンウィーク後の5月に日本で耐性のある赤痢が蔓延しているというニュースがないことを願っている。


連載「グローバリズムと日本の医療」バックナンバー

杉田米行(すぎた・よねゆき)

大阪大学大学院言語文化研究科教授。米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。

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杉田米行
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