認知症の緩和を期待できるロボットといえば、産業技術総合研究所が開発したアザラシ型のエンタテインメントロボット「PARO(パロ)」がある。2002年にギネスブックは「世界一の癒しの動物型ロボット」と認定した。長さ57cm、重さ約2.7kg。タテゴトアザラシの仔をモチーフにした、ぬいぐるみのような外観だ。抗菌性のフェイクファー仕上げ。起毛の長い毛布に近い柔らかな感触がある。充電すれば1.5時間、作動する。
頭・ひげ・あご・背中・脇腹・前脚・後脚の触覚センサ、眼の光センサ、姿勢センサ、温度センサを搭載する。音声はマイクロホンで聞き取り、約50語の単語を識別する。呼びかけに反応し、約20種の鳴き声で答える。撫でれば、頭・まぶた・前脚・後脚を動かして喜びを表わし、愛らしく反応する。パロと触れあえば、心理的なストレスを軽減させるアニマルセラピーに近い効果があり、認知症の進行抑制や癒し効果が見込める。2008年4月までに1000体以上が販売され、デイサービスセンター、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、小児病棟、児童養護施設などで活躍している。価格は35万円。米国でも6000ドルで販売されているという。
ただ、パロとペッパーの違いは、ペッパーが人型ロボットである点だ。話し相手を認識し、身振り手振りを交えて会話する。冗談を言ったり、笑ったり、喜んだりする。話しかけると、「こんにちは、僕はペッパーです。今日は何しに来たの?」と陽気に答える。人間のような親しげなリアクションにいつしか癒やされる。人間や障害物をセンサで検知し、衝突の危険性を制御する衝突防止機能や、押されても倒れないオートバランス機能など、セーフティでユニバーサルな機能とデザイン兼ね備えているのもペッパーの魅力だ。話し相手になるだけで、認知症の進行防止に役立つなら、19万8000円の価格は、決して高くないかもしれない。開発者向けと一般家庭向けの次回の販売は、この夏頃を予定している。
感情認識パーソナルロボットのペッパー。人間の生活に寄り添えるパートナーになれるだろうか? 高齢者、障がい者、認知症の患者など、心身のハンディを持つ人たちを精神的にサポートしながら、人間らしい生き方を気づかせてくれるだろうか? 次回は、医療用ロボットのルーツを探ってみよう。
(文=編集部)