アルツハイマー型認知症に襲われた大学教授を熱演したジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞

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映画『アリスのままで/Still Alice』ジュリアン・ムーア ©2014 BSM Studio. All Rights Reserved

 2月22日(日本時間23日)、第87回アカデミー賞の授賞式がアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われた。主演女優賞に選ばれたのは、『アリスのままで/Still Alice』(リチャード・グラツァー/ウォッシュ・ウエストモアランド共同監督)で、アルツハイマー型認知症の主人公を演じたジュリアン・ムーア。ノミネート5度目となる今回、初のオスカーを手にした。ベネチア、カンヌ、ベルリンの世界3大映画祭の女優賞制覇に華を添える受賞だった。

『アリスのままで』は、全米ベストセラーとなったリサ・ジェノヴァの小説『静かなるアリス』の映画化。アルツハイマー型認知症と診断された言語学者が、日ごとに失われる記憶に苦悩する姿を淡々と追う。ムーアは同作で第72回ゴールデングローブ賞・女優賞(ドラマ部門)も受賞している。

 ムーアは「オスカーに輝くと寿命が4年間延びるらしいですね。このようなチャンスに恵まれて感謝します。夫が年下ですから(笑)」とジョークを交えてコメント。アルツハイマー型認知症の治療法ができるだけ早く見つかってほしいとも語った。

もうすぐ私はすべてを忘れる。けれども愛した日々は消えはしない

 ニューヨークのコロンビア大学で教鞭をとるアリスは50歳。著名な言語学者、有能な大学教授としてリスペクトされ、学生の絶大な人気を集める。夫のジョンとは相思相愛で、結婚した長女アナと医学院生の長男トムに希望を託すものの、ロサンゼルスで女優をめざす次女リディアだけが不安のたねだ。

 そんなアリスを厄災が襲う。講義中に言葉が出ない、ジョギングで街に出ると家に帰れない、物忘れがたびたび起こる......。診察を受けた結果、アルツハイマー型認知症を宣告され、アリスの難病との闘いが始まる。

 世界保健機関(WHO)によれば、認知症の患者数は全世界で約3560万人。日本でも約462万人(厚生労働省2013年6月発表)の認知症患者がおり、65歳以上の8人に1人という高い発症率だ。さらに、認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)の高齢者数も約400万人にのぼる。

 認知症の66%はアルツハイマー型、20%が脳血管性、レビー小体型が6%だ。最近は18歳~64歳の若年層のアルツハイマー型認知症が増え、世代を問わず根本的な治療法の確立が急務になっている。

 医学の進歩はめざましい。2011年に製造承認されたアルツハイマー型認知症の治療薬のメマルチン塩酸塩(メマリー)、コリンエステラーゼ阻害薬ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン・リバスタッチ)が販売され、コリンエステラーゼ阻害薬ドナベチル(アリセプト)を含め4製剤が国内で使用されている。

 さらに、理化学研究所の西道隆臣博士による、原因物質であるアミロイドβペプチド分解酵素ネプリライシンの発見、大阪大学の森原剛史准教授らによる、アミロイドβタンパクが脳に溜まる量を左右する遺伝子KLC1Eの発表などが相次いでいる。また、京都大学と長崎大学の研究チームは、iPS細胞を使ってアルツハイマー型認知症の発症のメカニズムを再現し、アルツハイマー型認知症の原因物質に異なるタイプが存在することを究明。ドコサヘキサエン酸(DHA)が細胞内ストレスを軽減し、アルツハイマー型認知症の進行を緩和するという新たな知見も得られた。これらのトピックは、近い将来、アルツハイマー病の診断薬の開発や病理解明につながっていくだろう。

 ちなみに、『アリスのままで』の共同監督リチャード・グラツァーは、4年前からALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、闘病中だった。ALSは筋肉の萎縮と筋力低下をきたす重篤な神経変性疾患だ。進行が速く、罹患者の半数は発症後3〜5年で呼吸筋麻痺によって死亡する。しかし、グラツァーは、ウォッシュと名コンビを組み、作品を精力的に仕上げた。映画人の情熱と強かな意志を感じさせる。

「もうすぐ私はすべてを忘れる。けれども愛した日々は消えはしない」

 アリスの希望は、私たち人類の希望でもある。
(文=編集部)

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