連載第4回 健康って何だ?~フィットネス道の探求~

肥満の解消やメタボの予防には"ニート"を増やせ!

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階段を使うだけで"ニート"が増加?

 皆さんは、肥満の原因といえば何を想像するだろうか。「食べ過ぎ」「糖質の摂り過ぎ」などの理由が、真っ先に頭に浮かぶかもしれない。しかし、日本人のエネルギー摂取量は1975年頃の2226 kcalをピークに減少傾向にあり、2004年には1902 kcalまで低下した。これは終戦直後(1946年)の1903 kcalとほぼ同じだ。

 食事から摂取するエネルギー量は減少しているのにも関わらず、肥満者が増え続けているのはいったいなぜだろう。この理由の一つは、現代社会のもつ便利な生活習慣にある。我々の「エネルギー摂取量」が、「エネルギー消費量」を大幅に上回ることで「エネルギー過剰」となっているからなのだ。

 肥満は、「食べ過ぎ」や「運動不足」「食事の偏り」「熱産生障害(体温維持や食後のエネルギー燃焼低下)」「自律神経機能の低下」などが、さまざまに絡み合ってできた副産物といえる。

 厚生労働省の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人の肥満の割合は男性30.3%、女性21.5%。日本では、40歳以上の男性の2人に1人が「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の可能性があるとまでいわれている。

 摂取カロリーが減ってきていることを考えると、肥満は戦後日本の激変した食生活環境や日常の便利さによる運動不足が引き起こす"現代病"だと理解してもいいだろう。

日常生活のちょっと工夫でメタボ予防

 ところで、「ニート」という言葉を耳にしたことはあるだろうか? 「ニート」といっても「学校に行かない」「仕事をしていない」若者のことではない。ここでの「ニート」とは、「Non Exercise Activity Themogenesis」の頭文字。計画的な運動ではない、立位や歩行、掃除など日常の生活活動(日常動作)で発生する熱量。「非運動性活動による熱産生」のことをいう。

 一日の消費エネルギーの約60%は基礎代謝と食事誘発性体熱産生で、残りの40%の多くを占めるのがこのNEATだ。近年、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームの発症には、NEATが大きく関係していることが論文などで発表されている。

 ということは、特別な運動をしなくても日常生活でのNEATを増やしていけば、肥満や糖尿病は予防できる可能性がとても高いのだ。だが、運動習慣を生活に取り入れなくてもいいかというと決してそうではない。

 「やるぞ!」と、特別に運動する時間を"無理"に作らなくても、日常生活でちょっと気をつけるだけで、いままで以上の運動量を確保することができる。たとえば、エレベーターを使わずに階段を使ってみたり、座って電話をせずに立ってしてみたり、椅子の立ち座りをできるだけ多く意識してみたり、さまざまな工夫によってNEATを増やすことにつながっていく。

 スウェーデン・カロリンスカ医学大学のマイ・リス・ヘレニウス教授による研究チームの最新の医学研究では、「座って過ごす時間が長い人ほど、寿命を縮める可能性が高い」と報告されている。

 いつもより早く歩いてみたり、歩幅を大きくしてみたり、いろいろな自分スタイルのNEATを考えてみよう。日頃から運動習慣がある人はNEATを増やすことで、さらに肥満やメタボの予防・改善の効果を高めることができるわけだ。さっそく、意識して"ニート"を増やしてみよう。

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村上勇(むらかみ いさむ)
フィットネスアドバイザー。JT東京男子バレーボール選手を引退後、現・スポーツクラブ「ルネサンス」に勤務。2007年から「メディカルフィットネス+スパ ラ・ヴィータ」のゼネラルマネージャーとして施設運営に携わる一方、トレーナーとして主婦や高齢者、アスリート(サッカーチーム・モンテディオ山形、加藤条冶:スピードスケート、黒田吉隆:レーシングドライバー)、著名人(指揮者・飯森範親など)を幅広く指導。現在は株式会社ドリームゲート代表として、スポーツチーム・アスリート・企業などを指導、運営協力に携わる。

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村上勇(むらかみ・いさむ)

フィットネスアドバイザー。JT東京男子バレーボール選手を引退後、現・スポーツクラブ「ルネサンス」に勤務。2007年から「メディカルフィットネス+スパ ラ・ヴィータ」のゼネラルマネージャーとして施設運営に携わる一方、トレーナーとして主婦や高齢者、アスリート(サッカーチーム・モンテディオ山形、加藤条冶:スピードスケート、黒田吉隆:レーシングドライバー)、著名人(指揮者・飯森範親など)を幅広く指導。現在は株式会社ドリームゲート代表として、スポーツチーム・アスリート・企業などを指導、運営協力に携わる。

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