連載第5回 目に見えない食品添加物のすべて

増え続ける日本の食品添加物! あやふやな安全性と認可方法

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カズノコの黒ずみを漂白するための添加物・過酸化水素水も、一時、使用が禁止された shutterstock.com

 増え続ける日本の食品添加物。しかし、その安全性や認可方法の実態は、実にあいまいで、疑問を感じざるを得ない。

 添加物は毎日、長年にわたって摂り続けるものだ。しかも幼児から高齢者まで多くの人が口にする。そのため、添加物の認可は相当厳しく審査され、決められるべきものだろう。安全性は確かなのか、使うことによるメリットがデメリットを上回る必要不可欠な添加物なのか等々......。

 医薬品の場合、たとえ副作用があっても病気を治すという効果が高ければ、その薬が使用される。しかし、それは専門知識を持った医師の管理下で、薬の投与量、回数を決められ、経過を観察するというリスク管理がしっかりしている中での話だ。

 ところが食品添加物や農薬には、そんなアドバイザーはいない。「この添加物を摂ると、こういうメリットがあるが、こういうデメリットがある。この場合は、メリットを優先して使用したほうがよい」などとアドバイスしてくれる人はいないのだ。

突然の使用禁止? あやふやな安全性と認可方法

 それまで当たり前に使用されていた添加物が、ある日突然、何の前触れもなしに使用禁止になることがある。

「過酸化水素水」が発がん性の疑いで禁止になった時は、カズノコ業者が混乱した。もともとが黒ずんでいるカズノコは、過酸化水素水で漂白をすると、きれいな黄金色に仕上るからだ。茹でうどんの殺菌にも使用されていたので、製麺業者にも影響が及ぶ可能性があった。ただし、その後、「最終食品に残存しない」との条件で、過酸化水素水の使用が認められることになり、事なきを得たが......。

 1947年12月に食品衛生法が制定されて以来、約60年間で60品目以上の化学合成添加物(指定添加物)が禁止され、削除されてきた。そのほとんどが後から発がん性が確認され、禁止となったものである。

 一方で、一度は禁止になりながら、後から再認可される添加物もある。甘味料の「サッカリンNa」などが有名だ。かつては発がん性があるとして禁止になったが、それはカナダ製のサッカリンNaのことであり、カナダと日本のものは製法が違うため、安全性が確認されたとして再認可されたのだ。

 そもそも添加物は、安全だと保証されているから認可が下りたのではないか。それが、なぜ後からくつがえされたり復活したりするのか、という疑問が起こるのも当然だろう。

 その疑問がさらに深まる出来事が起こった。

 食塩を固まるのを防ぐ作用のある「フェロシアン化カリウム」「フェロシアン化カルシウム」「フェロシアン化Na」という添加物がある。鉄とシアンの化合物で「黄血塩」とも呼ばれ、食塩に限り使用が認められている。この添加物は、日本では認可されていなかった。というのも、日本の塩は製塩技術が高く、また長期保存・長距離輸送がないため、必要ないからだ。

 しかし、黄血塩を含む中国産の食塩と、その食塩を使用した加工食品が、大量に流通していたことが、日本に輸入されてから8カ月も経ってから「発覚」した。本来なら即座に回収となるはずが、事はそう簡単に運ばなかった。使われたのが1種類の食品ならまだしも、食塩に含まれる添加物のため、いろいろな食品に使用されていた。そこで、回収を通告するより認可してしまったほうが騒ぎにならないだろうという判断のため、なし崩し的に8カ月前にさかのぼってこの添加物は「認可」となったのだ。

 いったん認可されたものが後で禁止になったり、復活したり、さらには使用された後から認可が下りたりする――。食品添加物の安全性と認可方法は、こんなあやふやな状況であるのがまぎれもない実態なのだ。

添加物の情報は少なすぎる!

 現在、ものすごいスピードで添加物が新しく認可され、市販の加工食品に使用されている。しかし、新しい添加物が認可されても、新聞やテレビでは一切取り扱わない。私たちは消費者が知るのは「何か起きた時」だけ。一部の専門家から添加物の危険性を指摘されたり、あるいは違反事件が起こった時だけだ。

 新しく指定される場合には、事前に「◯◯という添加物は××という食品に使用され始める。その目的はこれこれである」といった内容を、市政だよりレベルで発表があってしかるべきではなかろうか。さらに、新規添加物の原料や製造方法、安全データなどは、ネット等で簡単に調べられるようにするべきだろう。そうすれば食品を選ぶ際の1つの選択肢にできる。

「必要以上の混乱を起こすから」という理由で、リスクが発表されないことすらある。リスクを公開せずに都合のよいデータを発表する。情報が乏しいから一般の市民は混乱し、騒ぐ。そうするとヒステリックと批判を受ける――。

 添加物を支持・擁護する業界の人は、「消費者のみなさんには正しい理解と認識をしてほしい」というが、こんな少ない情報の中でどうやって正しい理解をすればよいのか。消費者は、安全な添加物より、あやしい添加物を知りたい。リスクをきちんと知りたい。私たち日本国民はそんなにバカではない。

連載「目に見えない食品添加物のすべて」バックナンバー

安部司(あべ・つかさ)

食品添加物評論家。1951年、福岡県生まれ。総合商社食品課に勤務後、無添加食品の開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わり、現在に至る。熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権 食品製造特許4件取得。食品添加物の現状、食生活の危機を訴え続けている。主な著書にベストセラーとなった『食品の裏側』(東洋経済新報社)、『なにを食べたらいいの?』(新潮社)、『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』(祥伝社)などがある。

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