連載第4回 目に見えない食品添加物のすべて

安くて、キレイで、安全で、添加物もゼロ!? 消費者の矛盾が招いた農薬・添加物天国の実態

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食品添加物は避けたいが、安くておいしいものを食べたいという消費者の矛盾が... shutterstock.com

 世の中の健康志向は高まりつつあるというのに、食品添加物は増え続ける日本。なぜこんなに添加物が使用されるのか――。それは、やはり食品添加物を使用することに大きなメリットがあるからだ。

「添加物はいやだ」「できることなら避けたい」という消費者は多い。しかし、一方で食品を買う際の優先順位はというと、

①安い(増量、置き換え、輸入など)
②簡単(だしもとらない、調理しない)
③便利(手間いらずで長期保存。いつでも手に入る)
④きれい(色・形・見た目がよい)
⑤おいしい(つくられた濃い味)

 という5つに集約される。これらは、すなわち添加物の使用目的でもある。

 日本にある食材で、日本で加工できるものなのに、わざわざ外国の原料を使い、現地加工して、できあがった調理済み食品を輸送する――。これらはすべて、コストをおさえるため。そんな輸入の冷凍済み食品もコンビニ弁当も、真空パックのおかずも、「安くて便利、見た目もきれい」なため消費者は大好きだ。

 同じくドレッシングも、だしの素をはじめとした「◯◯の素」なども、飛ぶように売れる。これらは自宅で添加物を使わずに作れるものばかり。しかし、どんな材料を使ってどのように作られているかより、「簡単で便利」さが優先される。口では理想を言っていても、消費行動にウソはつけない。

 時として私たち消費者は、「手間をかけるのが面倒」なために、少々高いものすら買ってしまう。こうした「面倒」をねらっているのが輸入食材、添加物を多用する食品会社だ。「安くて簡単で、便利でキレイ、おいしくて添加物ゼロ」の食品は成立しないのに......。

私たち消費者の行動は矛盾している

 ところで、「生協のものは添加物が少ない」「生協は安全にこだわった食べ物を製造販売している」というのが多くの人の認識かもしれない。生協というのは、消費者が出資して組合員になり、理事会を組織して共同で運営利用している。全国の生協を束ねた組織、日本生活協同組合連合会(日生協)に加入している生協だけでも、全国で300以上ある。

 消費者が出資しているため、理事会と組合員のニーズの「優先順位」が商品に反映される。理事会の取り組み姿勢、方向性、組合員の意識が、それぞれの生協に反映されるわけだが、最初からなるべく加工食品や調理済み食品を取り扱わない素材中心の生協の場合、取り扱う商品や組合員数も少なく、新規加入者も多くは見込めない。

 一方で、添加物や農薬、輸入品を多く扱う生協の場合、それだけ組合員のニーズに応えることができ、加入者も多い。中にはスーパーより添加物の多い商品を持つ生協もあり、一部の生協は宅配スーパー「セーキョー」と呼んだ方がいいのではないか、と思えることさえある。「生協」=「添加物を使わない」と簡単に考えず、生協とひと口に言っても、個々に違いがあるということを知っておくべきだろう。

きれいでないと売れない野菜

 添加物の話からは少しずれるが、野菜の世界でも同じことが起こっている。鮮度がよくても、形がいびつだったり、大きさがそろっていなかったり、曲がっていたりするとそれだけで野菜の売れ行きは悪くなる。ましてや虫食いなどがあったらなおさらだ。

 きれいで、まっすぐ、虫食いもない野菜......。しかし、その裏側でどれだけの農薬や化学肥料使用されているか。さらには、色・形・1袋ずつの重さを均一にするために、手間ひまをかけて選別したり計量したりする。そのため野菜の単価はどんどん高くなる。

 いまの日本人の野菜に対する要求は、本質よりも「付帯・付属」の部分に目がいっている。見た目はきれいか、形がきちんとそろっているか、売り場のディスプレイはどうか、宅配なら指定どおりに持ってくるか、買い物のポイントは高いか等々。こんなことは後回しの部分なのに、そこが食品選びの基準になってしまっているのだ。

 品質はどうでもいい。見た目と利便性、作業効率ばかり追求するから添加物や農薬を大量に使って地球の反対側から食品を持ってくるといったねじれた構造が生まれてしまう。消費者の意識が変わらないかぎり、日本はいつまでも変わることなく農薬天国・添加物天国が続くことになる。


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安部司(あべ・つかさ)

食品添加物評論家。1951年、福岡県生まれ。総合商社食品課に勤務後、無添加食品の開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わり、現在に至る。熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権 食品製造特許4件取得。食品添加物の現状、食生活の危機を訴え続けている。主な著書にベストセラーとなった『食品の裏側』(東洋経済新報社)、『なにを食べたらいいの?』(新潮社)、『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』(祥伝社)などがある。

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