Amazonの栄養科学ジャンルで長期1位、常識を覆す健康書に注目した!

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これまでの栄養学の常識を覆す刺激的内容

 それでは、本書では栄養についてどのようなことを語っているのだろうか?
これまで常識だと信じてきた常識を否定する驚くべき事実が数多く書かれているが、日本人の大好きなサプリメントについての研究では、「多くのサプリメントは長期間服用することによって、かえって寿命が縮む」という結論を提示する。

 一つの例としてがんの成長を阻止する、強力な抗酸化物質としておなじみのベータカロテン。ベータカロテンを食物から摂取した場合は確かに肺がんの減少などと関連付けられ、その効果が観察された。しかし、ベータカロテンのみをサプリメントとして長期間摂取した場合、6年半が経過した段階で肺がんによる死亡が46%増加したという研究結果や心血管系の死亡も26%増加したとの大規模な研究結果がある。

 また、りんご100グラムとそこに含まれているビタミンCと同量のビタミンCサプリメントの抗酸化力を比較してみたところ、なんとりんごの抗酸化力はサプリメントの263倍だったという驚くべき実験結果も報告している。このことはビタミンCのみを取り出して服用しても抗酸化作用が極めて低いこと示している。

新しい栄養学の事実を受け入れがたい社会の利権構造

 著者は栄養学の権威として、アメリカ政府の健康政策に長年関わっており、政策審議委員も務めていた。その経歴から、健康に関する有益な研究が巨大食品メーカーや製薬会社などの利権産業によってゆがめられてきた経緯をじかに体験してきた。

 巨大企業が政策をゆがめると聞けば、日本ではどうしても陰謀論扱いされがちであるが、間近で観察してきた著者が説明するその構図には、陰謀論では片づけられないリアリティがある。業界の献金額の大きさや、業界と行政機関を特定の人間が行ったり来たりすること(回転扉ともいう)による政策の操作などを具体的な人名を挙げて説明している部分はリアルだ。

 同様に、研究に対する研究費の予算配分にも、大きなスポンサーである大企業やその献金によって活動している政治家の意向が大きく働き、スポンサーの意向とずれた研究には事実上予算が回ってこない現実。著者自身も、自らのキャリアと研究のために、研究の方向性を変えたことがあると認めている。おそらくこの日本でも事態はさして変わらない。

この本が科学的であり、著者の経歴的に信頼できる内容というのが世界的なベストセラーになった秘密のようだ。

栄養学界はリダクショニズム(細分主義)の病魔に侵されている

 栄養学界が機能不全を起こし、 袋小路に迷い込んでいるのはなぜなのか?

 著者は、今の医学界(欧米では栄養学も医学の一ジャンル)にまん延するリダクショニズム(細分主義)に原因があると言う。リダクショニズムとは個々の部分に注目し、その働きを深堀していく考え方。例えば、ニンジンが体にいいとなれば、そのいい成分を突き止め、それがベータカロテンであるなら、それのみを抽出して摂取すればよいという考え方である。

 その考え方は収益をあげるには非常に都合がよい。なぜなら、毎日ニンジンを食べるよりサプリメントを買って毎日摂取してもらった方が、大量生産に向いており、効率的に収益をあげられるからだ。

 ここに大きな問題があるというのが、本書の大きなテーマである。

 りんごとビタミンCサプリメントの比較研究でもわかるように、栄養は食べ物全体に含まれる数百種類もの多様な栄養素が蜘蛛の巣のようにお互いに関連しあって効果を発揮している。そこから単一成分だけを取り出しても本来の効果は期待できないどころか、長期的には全体の栄養バランスを崩してむしろマイナスになってしまうという事実が本書の大きなテーマの一つだ。

細分主義ではなく全体を見るホーリズムへ

 著者の主張はひとつ、真の健康を手に入れるためには個々の部分だけにとらわれず、全体を考えてみること。その具体的な実践として、特に抽出された成分で作られたサプリメントや薬には頼らず、野菜、穀物、果物など植物性食品を出来るだけ丸ごと食べるPBWF(プラントベース・ホールフード)食を推奨している。

 著者が、推奨しているPBWF食は、アメリカでは毎年大規模なシンポジウムが開催され、研究発表や聴講のため全米のみならず世界中から医学関係者が集ってくるくらいの一大ムーブメントとなっている。ホールフーズマーケットという有機野菜をメインで扱うスーパーがアメリカで人気を集めていることを知っている人も多いだろう。

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HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

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