筋肉増強サプリの摂取、脳卒中・精巣がん・肝障害のリスク増大との研究報告

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筋肉増強サプリには注意が必要

 空前の“筋肉ブーム”となっている。これまで筋トレとは無縁のように思われていた女性や高齢者にまで「筋肉をつけたい」というニーズが高まり、ブームを牽引している。

 ブームの発端は、海外のトップモデルや有名タレントが自分の筋肉美をアピールする画像や動画をSNSに投稿し始めたことによる。ダイエットや痩せたいという願望が強かった日本人女性にも、「筋肉女子」「シックスパック」「ボディメイク」などの用語が飛び交うようになり、筋肉量低下が病気や介護リスクを招くと、高齢者も注目し始めた。

 昨年放送されて大反響を呼んだテレビ番組『みんなで筋肉体操』(NHK総合)は、まさにタイムリーな企画だった。「筋肉は裏切らない!」の決め台詞は、世間の話題をさらい、ブームを加速させた。その後もインスタグラムで筋肉美を投稿する女性が相次ぎ、多くのフォロワーを抱えるカリスマ女性トレーナーも数多くのメディアに登場するようになった。

 一方で、これまでは本格的アスリートが愛用していた、筋肉づくりに役に立つ健康補助食品やサプリメントも利用者の裾野が拡大。プロテインのみならず、新しいタイプのアミノ酸や代謝物のサプリメントなども続々と登場している。

サプリメント摂取で重篤な健康問題も

 効率よく筋肉強化や筋肉量をアップさせる健康食品やサプリメントに手が延びるのは人情ともいえるが、最近、安易な摂取に対して警鐘が鳴らされた。6月5日付「Journal of Adolescent Health(思春期の健康)」に、「信頼できる医師であれば、減量効果や筋肉増強効果を謳うタイプのサプリメントは処方しないものだ」との最新知見が掲載されたのだ。

<むやみに「減量」や「筋肉増強」、スポーツパフォーマンスの「向上」、性機能の「活力増進」を謳う一部のサプリメントを摂取すると、重篤な健康問題を引き起こす可能性が否めない>

 そんな研究報告を公表したのは、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のフローラ・オア氏が主導する研究班だ。報告書の中で、「若者たちが健康に有害な可能性があるサプリメント製品を使用できないよう、当局は規制をかけることが急務」と訴えている。

 オア氏らも認めているとおり、米国食品医薬品局(FDA)はこれまでも、指摘されているようなサプリメント製品に「警告」を発してきた。ところが、全米では今なお、これらのサプリが広く販売され使用されている。

 こうした背景を危惧したオア氏らの研究班は、FDA有害事象報告システムを用いて、10年以上(2004年1月~15年4月)の子どもから若年成人(0~25歳)のサプリメント製品による健康被害報告例を解析調査した。

 具体的には、ビタミン剤に関する報告例との比較検討が実施された。データから浮き彫りにされた「重篤な健康被害」には、「障害」や「生命に危険がある」状態に見舞われたり、「入院」を余儀なくされたり、「緊急受診」例や最悪の場合は「死亡」例も含まれていた。

 また、ビタミン剤摂取との比較分析で2つの傾向が読み取れた。

(1)「減量」「筋肉増強」「活力増進」などの効果を謳うサプリの場合、ビタミン剤と比べて「重篤な健康被害」を引き起こすリスクが約3倍に上がった。

(2)「性機能」「腸内洗浄」目的のサプリの場合、ビタミン剤摂取との比較で重篤リスクが約2倍だった。

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