日本での当事者意識の少なさと無関心は共謀に匹敵する
中国の臓器収奪問題に詳しい、多言語メディア「大紀元」の元編集長でジャーナリストの張本真氏は、こう語る。
「国連人権委員会の調査、アメリカ議会、欧州議会などでの決議案をはじめ、あまりにも多くの国際的な非難に耐えかね、2005年、中国は公式に死刑囚からの臓器摘出を認めた。しかし、事態は何も変わっていないし、手口はより巧妙になっている。もちろん、今回の判決は大変いいことだが、臓器収奪は中国の共産党が主導し国家ぐるみで行われている犯罪。共産党による統治体制が変わらない限り、大きな変化は期待できない。ただ、正しい道への修正には時間がかかる。地道にこの問題を世界に訴え続けて行くべきだと考えている」
また、マタス氏はたびたび来日し、「まさに現在進行形のホロコースト(大量虐殺)である」と、国会議員などに対しても惨状を訴えているが、同行したことのある張本氏は「日本での反応は、あまりにも鈍い」と指摘する。
「中国の移植業界と日本とは深いつながりがある。日本人向けの移植ツーリズムの需要に応えた移植センターは、日本の移植ブローカーと連携している。日本で移植技術を学んだ移植外科医も多い。中国は日本から大量の移植関連薬剤を輸入してきた。日本政府が一部資金を提供している中国の移植病院もある。私が報告書を発表してから10年以上経過したが、中国の移植乱用に関して日本が共犯となることを避けるための措置はとられていない。日本の官僚も医療界も、何もしない。日本が何も言わず、何もせず、何も知らないと主張する理由は、能力が不足しているからではないはずだ。見て見ぬフリをしているだけだ。それは沈黙という共謀になる」(マタス氏)
メディアの責任も大きい。これだけ大きな問題を、なぜ日本の主要メディアは取り上げないのか。
2016年のマタス氏の講演会で、日本のメディアがこの問題にまったく関心を示さないことが話題になったとき、大手新聞社の記者だった男性が「囚人からの臓器摘出などはもちろん知っていた。仮にその問題を取り上げれば、中国にある支局はすべて国外退去となる。どのメディアもそんなことはできるはずがなかった」と発言した。状況は今でもそれほど変わっていないようだ。