臓器狩りが中国にとっては数十億ドル規模のビジネスに成長
マタス氏は自著の中で事の経緯を簡潔に説明している。
「中国はまず、死刑囚の臓器を使って臓器販売を始めた。しかし、世界的に臓器の需要は大きく、また病院にはお金が必要だったために、死刑囚の臓器だけでは供給が追いつかなかった。そしてそこに、法輪功の学習者が登場する。彼らは迫害され、人間性を奪われていた。人数も膨大で、身元不明という無防備な立場にあった。これらの要素が組み合わさり、法輪功学習者が、臓器のために殺された。摘出された臓器は外国人に売られ、中国にとっては数十億ドル規模のビジネスになった」(p.112『中国臓器狩り』)
臓器供給源となっているのは囚人や法輪功学習者だけではなく、ウイグル族やチベット族などの少数民族も対象になっていることが今回の民衆法廷で指摘されている。囚人からの臓器提供は中国政府も認め、中国当局は2015年までに死刑囚からの臓器移植を段階的に中止するとの発表も行っているが、今回の民衆法廷では最悪の事態はまだまだ継続しているとの見解を示している。
ヨーロッパ各国や米国はここ数年、相次いで中国共産党による臓器摘出問題を公に非難している。
2016年6月13日、米下院で343号決議案が満場一致で可決。「中華人民共和国で、国家認定のもとで系統的に合意のない良心の囚人から臓器が摘出されているという信頼性のおける報告が継続的に出されていることに関して懸念を表明する」「(犠牲者には)かなりの数の法輪功修煉者、その他の信仰を持つ人々並びに少数民族グループが含まれている」と言及している。
欧州議会主席も同年7月27日、414名の議員が共同署名した48号書面声明を正式に発表。中国共産党に対し、囚人からの臓器摘出を停止するよう要求した。
今回最終裁定を出した「民衆法廷」は、これまで国際法上問題があると考えられる議題を有識者らが公開検証する独立調査パネル。これまでイラン、ベトナム、北朝鮮などでの人道犯罪を取り上げ、世界各地で開かれてきた。今回は中国臓器収奪が議題となり、中国から脱出した少数民族、信仰者、人権専門家、医師、作家らの証言を基に、英ロンドンで裁定を下した。
議長のナイス卿は、最終裁定により各国政府および国際機関は「義務を果たすべきだ」と述べた。そして、中国臓器収奪問題は、いまだに大量虐殺が進行している可能性があることから、国際裁判所や国連に訴える必要があるとした。