中国の臓器移植ビジネスの闇は深い
6月17日、ロンドンで開かれた「民衆法廷」で、ある大きな国際的疑惑に対する最終裁定が出た。約1年にわたり中国の臓器収奪問題について50人以上の証言と調査の結果を審議し、議長(元検事総長ジェフリー・ナイス卿)は、中国では移植手術の供給のために臓器収奪が行われているとの事実を、ほぼ認定した。さらには、各国の政府や企業などに対して、共産党政権の中国における国家的な人道に反する罪を認識するよう呼びかけている。
この日、有罪と断じられたのは、中国で継続して行われている移植のための強制的な臓器摘出、いわゆる「臓器狩り」だ。
新鮮な移植用臓器がたった数週間で用意されている
中国では十数年前から臓器移植の件数が急激に増加している。いまやアメリカに次ぐ世界第2位の移植大国だ。ところが、ドナー(臓器提供者)の報告がされることもほとんどなかった。しかも、外国人患者向けの臓器移植のあっせん(売買)サイトが多数存在し、肝臓=1000万円~、腎臓=600万円~、心臓=1300万円~、角膜=300万円~などと臓器別の値段を明示し「若くて新鮮な臓器が、早ければ数週間以内に見つかる」などとアピールしている。
移植大国・アメリカの10分の1程度の金額、しかも他国では2年も3年も待たなければならない適合臓器が、「たった数週間で見つかる」との謳い文句に各国から移植希望者が殺到している。もちろん、日本からの移植希望者も相当数含まれている。こうした状況は、かなり早い時期から国際的な注目を浴び、疑問視されていた。
しかし、中国国内の状況は非常にわかりにくく、一部の人権団体や調査機関などもその実態解明に取り組んでいたが、2006年初めから中国の収容施設での臓器収奪を告発する内部関係者の証言が相次いだ。
事態を大きく動かしたのは2006年3月、元中国医療関係者の女性が米国で自らの体験を証言したことだった。女性は遼寧省蘇家屯の病院に勤務する医療事務員で、夫は脳神経外科医。病院地下には5000~6000人の法輪功学習者を監禁しており、そのうち約4000人が薬物注射で仮死状態となり心臓、肝臓、腎臓、角膜などが摘出され、その後、身体を病院近くのボイラー室で焼却しているという。
法輪功は中国の伝統的健康法である「気功」を体得するための修練法だが、1999年に邪教と定められ活動が禁止された。以降、実践者たちは逮捕、投獄、収容所での虐待などを受けているといわれる。
関係者による赤裸々な証言を受け、カナダの元アジア太平洋地区担当大臣デービット・キルガー氏、人権弁護士デービッド・マタス氏が「臓器狩り」の独立調査団を結成。これまで『Bloody Harvest: Organ Harvesting of Falun Gong Practitioners in China(血まみれの臓器狩り:中国での法輪功修煉者からの臓器収奪)』と題する報告書、および『Bloody Harvest-The Killing of Falun Gong for Their Organs (Seraphim Editions)』とのタイトルの本にまとめている。同書は2013年に日本で翻訳書『中国臓器狩り』(アスペクト社)として出版されている。