発熱は悪いだけではない?
お子さんが小さいときに熱が出ると心配ですよね?
脳に害が出るんじゃないか?熱が続くと肺炎になるんじゃないか?と心配は尽きません。おそらくは、最も熱の患者さんと向き合う頻度が多い医療職のうちの一つが小児科医です。私は、受診した子どもがどんなに軽症に見えても、そのママ、パパにとって初の子どもで、特に初めての発熱であれば、じっくりと説明をするようにしています。
医療者にとっては軽症であっても、ママ、パパにとっては初の経験であり、重症に感じているかもしれないからです。
今まで、熱にまつわる様々な心配事を相談され、勉強させていただきました。今回は、そのご恩返しも兼ねて、子どものお熱に関する知識や対処法をお伝えします。
発熱に直面するとママ、パパの不安はたくさんあることと思います。でも、過大な不安を持つ必要はありません。発熱は、身体に有益でありこそすれ、害をもたらすことはほとんどないのです。
1. 発熱は有害か?
通常、ウイルスや細菌などの感染が起こると、発熱が生じます。
発熱というと、誰もが心配になるのが脳障害ですが、脳障害は通常の発熱で生ずることはまずありません。42度を超えるような発熱であれば脳障害の懸念は出てきますが、通常の感染症では、それがインフルエンザであろうとアデノウイルスであろうと42度を超える事は無いように人体は出来ているのです。42度を超えるような事態は、極端な脱水や熱中症の場合がほとんどなのです。
欧米の病院サイト等を見ても、発熱への過剰な心配が不要であることが記載されています。特に、(3)のテキサス小児病院のサイトでは、「発熱にまつわる5つの迷信」という形でメッセージが発信されています。
(1)https://www.seattlechildrens.org/conditions/a-z/fever-myths-versus-facts/
(2)https://medlineplus.gov/ency/article/003090.htm
(3)https://www.texaschildrens.org/blog/2016/11/top-5-fever-myths-and-facts
発熱の原因が感染症の場合を見ると、小児に対して悪さをする病原体の代表格はウイルスです。このウイルスは37度程度で最もよく繁殖すると言われています。細菌の繁殖もほぼ同様です。つまり、ちょっと微熱っぽい時が、病原体が繁殖しやすい時なのです。一方で、身体の免疫力の方はというと、発熱とともに活性化してきます。
仮に体温が38、39、40度と上がって行ったらどうでしょう?身体に病原体がいる場合、その繁殖力は鈍り、免疫力は活性化していくのです。つまり感染症の治療になるのです。
だから、発熱を放置して肺炎になるというのは理屈に合いません。ただし、肺炎になってしまっている場合に、その治療をしようとして、体温を必死に上げているという状況は考えられます。
今までの話をまとめると、熱は脳に害のあるものではなく、それが高いほど治療効果が高いという事にもなります。例えば、発熱初期に悪寒(ふるえ)が生ずる事がありますが、これは筋肉を震わせる事で、熱を産生しようとしている反応なのです。つまり、熱を早く上げようとする動きです。これほどまでに、人体は、発熱する事で病原体から身を守ろうとするのです。
でも、いいことばかりではなく、発熱時の不快感をどうにかしたいですよね?発熱時の対処法について、次から見ていきましょう。