薬を減らして子供の免疫力を育てよう(depositphotos.com)
小児科専門医の鳥海佳代子医師(とりうみ小児科院長)は、夫も小児科専門医で、双子の母親でもある。子どもが病気のときは夫が診察し、薬を処方していた。
医師が自分の家族や従業員を診察して治療を行うことを「自家診療」という。医師国民健康保険組合に加入している場合、自家診療の保険適応は禁じられているが、鳥海医師も夫も加入していないので自分の家族の処方ができる。
ところが、鳥海医師の場合、夫が子どもに処方した薬の9割は子どもに飲ませる必要がなくなってしまい、結果的に捨てることになったそうだ。「夫に限らず、一般的に医師は薬を多めに出す傾向があるんです」という鳥海医師。
「子どもにあまり薬を飲ませたくない」「薬嫌いの子どもに飲ませるのが大変」という母親の声をよく耳にする。『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』(マキノ出版)の著者でもある鳥海医師に、子どもに薬を飲ませる必要があるときとないときについて話を聞いた。
病原体にさらされることで免疫力が強くなる
小児科医はハードな仕事である。感染症が流行する季節には、待合室は子どもでいっぱい。小児科医は次々と患者を診察し、昼食を取る余裕もないほどだ。
そして、診察時にはウイルスや細菌などの病原体にもさらされている。鳥海医師がどのように体調管理をしているのかを聞いたところ、「手洗い・うがいといった基本的なことだけです。実は、日々、ウイルスなどにたくさん接していることで、免疫力が強化されているんです」と答えが返ってきた。
小児科医もスタッフも、勤務を始めてから1年ほどは頻繁にかぜ症候群などの感染症にかかるそうだ。ただ1~2年を過ぎると、めったなことでは感染症で体調を崩さない。
キーワードは「免疫力」だ。子どもについても、保育園や幼稚園、学校に通うようになり、たくさんの人と接するようになると、当然、病原体に出合う。病原体と体が闘い、克服することで強くなっていくのが免疫力である。
鳥海医師は「熱は体が病原体と闘っているサイン。ですから、発熱を怖がり過ぎたり、目の敵にしたりしないでほしいですね」と語る。
発熱時によく処方されるのが解熱剤である。「解熱剤を使えば早く治る」というのは誤解で、むしろ治りが悪くなるケースもあるそうだ。
「解熱剤で熱を下げる、4~5時間後にまた熱が上がる、解熱剤で熱を下げる、4~5時間後にまた熱が上がるということを繰り返してしまうと、結果的に発熱の期間が長引くことがあると言われています」と鳥海医師。こうしたことから、夫が子どもに処方した解熱剤をほとんど使わなかったという。
そんな鳥海医師は、どんなときに子どもに薬を飲ませたのだろうか? 日常生活に大きな支障が出ているとき、そしてインフルエンザにかかったときだったそうだ。
「咳(せき)で何度も夜中に目を覚ますときには鎮咳去痰剤系(咳を和らげてタンを出しやすくする薬)や気管支拡張剤を使いました。ただ、症状をよく見極めながらの使用で予防的に薬を飲ませることはないですね。絶対に必要な薬は多くはないんです」と鳥海医師は話した。