連載「歯科医療の革命~顕微鏡歯科治療」第6回

治療用顕微鏡を使った「歯の神経治療(歯内療法)」の3つの方法

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歯髄を取る治療

 むし歯が重症化し、細菌が歯髄に感染して「歯髄炎」という炎症を起こしてくると、強い痛みを発したり、歯髄が死に始めたりします。そうすると、傷んだ歯髄を取らなければなりません。その歯髄を取る治療を「抜髄」と言います。根管の中にある歯髄を根の先まで取り、歯髄を取った後の根管を殺菌消毒したのち、根管を根の先まで蓋をします。

 しかしながら、歯髄の通り道である根管は、狭く暗く、歯の根の中で複雑に枝分かれしていたり、大きく曲がっていたり、石灰沈着により、治療器具が入らないくらい細くなっていたりと、根管を隅々まで殺菌・消毒するのは困難を極めます。その結果、治療が上手くいかずに再治療になるケースが後を絶たないのが現状です。

 そんな中で近年、歯科用CTによる根管の診断と治療用顕微鏡による根管の可視化により、根管の複雑性に対応できるようになってきています。肉眼や拡大鏡では狭く暗い根管の中は良く見えないので、通常勘や手探りで治療を進めていくことになります。治療用顕微鏡は、根管の中を明るく照らし、拡大視できるので治療の不備の見落としを減らすことができます。

 またCT画像は、色々な方向から歯の中を解析することができます。治療用顕微鏡は、根管の入り口までしか見えず、その先の曲がったり、枝分かれした根管の状態はわかりません。CT画像により根管の枝分かれや曲がり具合を予測することができるので、治療用顕微鏡を組み合わせることにより、根管の状態を肉眼やルーペより遥かに高い情報量により治療できます。

根管の感染を取る治療

 根管が細菌感染し、歯の根の周りに膿を持ってしまう原因は、歯髄が腐敗してしまっているケースと根管治療をしたけれど根管に感染が残ってしまったケースです。歯髄がむし歯などの原因で腐敗したり、抜髄をした時に、感染を十分に除去できずに根の周りが膿んできてしまった時に行われる治療です。

 通常は、腐敗した歯髄組織の除去や感染した根管を殺菌・消毒し直すことにより、歯根の周りの膿を改善していきます。基本的には抜髄と同じで、根管の隅々まで殺菌・消毒することにより改善を図りますが、治療成績は抜髄同様、根管の複雑性の影響を大きく受けます。そのため、抜髄同様ラバーダム防湿法などの根管への再感染対策も治療時には必須となります。

 また膿の中には、根尖口外感染という歯の根の外で細菌が蔓延しているケースもあり、その場合は根管の殺菌消毒だけでは改善せず、外科手術により根の先の膿を、感染が残った根っこの先ごと除去する処置によって改善を図ります。

 ただ、歯内療法によって膿が治らない場合、歯根破折と言って歯の根が割れていることもあります。その場合には歯内療法では治せず抜歯となります。

 また、根管に根管治療用の清掃器具が折れ込んでいたり(破折ファイル)、根管の壁に穴が空いてしまっている(パーフォレーション)ケースは、以前は治療が上手くいかずに抜歯になることも多かったのですが、現在は治療用顕微鏡により破折ファイルの除去やパフォレーションの閉鎖がより確実になり、以前より歯を残せることができるようになって来ています。

 歯の神経を取る治療や根管の感染を除去する治療は、成功率100%ではないので、可能性があるなら、まずは歯髄を残す治療をするのをお勧めします。
(文=岡野眞)


治療用顕微鏡による歯の神経治療(歯内療法)の3つの方法の画像2

岡野眞(おかの・まこと)
岡野歯科医院院長。
1987年、昭和大学歯学部卒業、2001年、岡野歯科医院開業。11年顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定v-Super Dentist、14年日本顕微鏡歯科学会認定医。
日本歯内療法学会会員、日本顕微鏡歯科学会会員。
川崎生まれの川崎育ち。祖父、父と三代目の歯科医。現在の趣味は、音楽鑑賞と顕微鏡治療。

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