3Dプリンターは骨の再生医療の救世主?(depositphotos.com)
3Dプリンターによって骨の欠損部位の形状を0.1mm単位の高精度で再現、高い強度と骨置換性を持つ人工骨を開発!人間の骨のように、元の骨にくっつき同化して骨代謝に取り込まれる。
こんな治療方法が厚労省の製造販売承認を取得、5月から販売スタートしている。
ベンチャー企業NEXT21(東京都文京区)が東京大学のチームなどと共同開発したもので人工骨プリンター「CT-Bone」は骨の欠損部を0.1mm単位の高い精度で再現できるという。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やNIBIONH(医薬基盤・健康・栄養研究所)の支援を受け販売が実現した。
患者の骨とスピーディに癒合。感染症や合併症のリスクなし
整形外科手術や頭頚部手術などで行う欠損骨への治療は、自家骨、他家骨、異種骨、人工骨のいずれかを欠損部へ移植する。
欧米はボーンバンクからの他家骨移植が中心だが、日本は自家骨移植が主流。自家骨移植は、患者自身の足の骨や腰の骨を外科的に摘出・移植するため、自骨と癒合しやすいが、摘出時に患者の骨欠損が避けられない。
また、人工骨は、製造工程で焼結するので、生理活性が失われやすく、自骨と癒合しにくく、表皮から離脱・遊離し、露出するリスクを伴う。
ブロック、顆粒、セメントなどさまざまなタイプの人工骨があるものの、顆粒は骨置換性に優れるが、強度は低く、セメントは骨置換性が劣るが、変形が自由で強度は高い。顆粒、セメントも一長一短のため、疾患部位によってフレキシブルに使い分けるのが難しい。
これらの難題を解決したのがNEXT21の人工骨(CT-Bone)だ。
人工骨(CT-Bone)は、精密な形状(150マイクロメートル)と高い強度(自家骨と同等レベルの25~30メガパスカル)を両立する3Dプリンターによって成形されるので、患者自身の骨とスピーディに癒合し、感染症や合併症のリスクもなく、手術時間の短縮や患者の生理的負担の緩和にもつながる。
さらに、電子ビームやレーザーを用いて造形した人工骨は、長期にわたって構造力学的な安全性を確保するために、純チタンやチタン合金が用いられるケースが多い。だが、純チタンやチタン合金は、骨置換性がなく、体内に残存することから、患者への肉体的な侵襲性が高く、金属アレルギーの副作用も懸念されるデメリットがある。
ところがCT-Boneは独自に開発をしたリン酸カルシウムを再結晶化させたもの(Ca欠損ハイドロオキシアパタイト)で、人間の骨と同じ成分なので移植して患者自身の骨に一体化しやすいという特徴を持つ。
さらに、従来、骨の欠損部が複雑な疾患の正確な再建や、術後に骨負荷がある部位の治療は困難だったが、人工骨(CT-Bone)なら骨の内部まで含む3次元構造を設計しながら、高精度に任意の3次元形状を造形できる。
今後は、海外へのビジネス展開も視野に入っている人工骨(CT-Bone)。患者一人一人異なる形状に合わせたオーダーメード医療の力強い追い風になりそうだ。