日本老年医学会が提案する「虚弱」から「フレイル」へ
最近、「フレイル」あるいは「フレイリティ(Frailty)」という言葉が登場しました。日本老年医学会が、「虚弱」という言葉はマイナスイメージが強いということで、「フレイル」という言葉を用いることを提案しました(公益財団法人長寿科学振興財団のHPより)。
次の5項目のうち3項目が当てはまるとフレイルの状態と判断します。
①体重減少:年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
②疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3.4日以上感じる
③活動量低下:1週間の活動量が男性が383Kcal未満、女性が270Kcal未満
④歩行速度の低下:標準より20%以上の低下
⑤筋力低下:標準より20%以上の低下
フレイルの人はそうでない人と比較すると、3年間の死亡率が2.2倍になるそうです【註1】。また、高齢になると筋肉量が衰えてきてサルコぺニアという状態になったり、歩くのが遅くなって青信号のうちに渡れなくなったりするロコモティブ症候群などの状態になります。どちらもフレイルになりやすい状態だと言えます。
サルコぺニア、ロコモティブ症候群、フレイル状態は、運動機能が低下し、社会参加が減り、認知症となりやすく、要介護の入り口です。
フレイル状態の人もリハビリテーションで改善できる
一方、フレイル状態の人も30%程度はフレイル状態から改善できるという報告があり、高齢者はフレイルの予防と改善対策が重要だと言えます。
フレイルの予防には栄養、運動、社会参加が重要と言われています。この3つの要素は、リハビリテーションに全て備わっています。
リハビリテーションというと、障がいが起きて失われた手足の機能を訓練することにより取り戻すというイメージがあります。でも私たちは、リハビリテーションを「人間らしく生きる権利の回復」ととらえています。
運動機能ばかりではなく、食事を摂るための嚥下機能訓練、職場復帰のための職業訓練、社会参加のための訓練が含まれます。高齢者にとって、おいしく食事が食べられることは毎日の一番の楽しみかもしれません。高齢者や障がいを持った人に楽しみを感じてもらえるように、食事や外出、行事に参加することなどで満足感を感じられるように、QOLが向上することを目標にしています。
そしてリハビリテーションで「Enjoyment of life」を得ることが重要だと考えています。高齢社会、地域包括ケアでは、いかにリハビリテーションが重要かが良くわかります。
病院に行って「もう歳だから」と言われないように元気でいること。フレイル予防、介護予防のために、リハビリテーションをすることが、これからの元気の秘訣です。
医療者の方々も「おじいちゃん、おばあちゃん」と呼んだり、「歳だからあきらめましょう」とか「歳だから治りません」とか言わないように気をつけましょう
(文=鈴木龍太:鶴巻温泉病院理事長)
【註1】Fried LP, et al.: Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 56(3): M146-156, 2001 Bandeen-Roche K, et al.: Phenotype of frailty: characterization in the Women’s Health And Aging Studies. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 61(3): 262-266, 2006)