連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第24回

辛いものを食べると頭痛が起こる? 催涙スプレーや新しい片頭痛治療薬の開発にも注目

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カプサイシンの受容体と片頭痛

 カプサイシン受容体は、辛みを感じる受容体として知られており、その中の代表的なイオンチャンネル型受容体が「transient receptor potential(TRP)チャネル」と呼ばれています。口腔内だけでなく全身の皮膚に広く分布しています。本来は上記のように、カプサイシンをはじめとする化学物質、温度、浸透圧や痛みの反応に対して感覚神経を興奮させる作用があります。

 驚くことに、片頭痛の病態において、このTRPチャネルの一つである「TRPV1」が関連するという報告がされています【注1】。

 片頭痛患者で原因説の一つとして考えられているものに三叉神経血管説が知られています。脳の動脈から大脳表面の動脈および血管にある三叉神経節が分布し、痛みを中枢へ伝える働きをしていると考えられています。この神経の伝える働きのところで関係するのが、TRPV1であるとされています。

 最近このTRPV1は、新しい片頭痛治療薬のターゲットとして注目されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)との関連も指摘されています【註2・3】。

 このように考えると、辛いものを食べると頭痛を誘発するようにも思うのですが、不思議そのような報告は少ないようです。

 ここまで、辛い食べ物の中に含まれているカプサイシンとその受容体についてのお話しをしてきました。やはり、今年の夏には辛いものを食べて、汗をかくことで、そのあとが涼しく清涼感を味わえるのではないでしょうか。どうか今年の猛暑に負けないようご自愛ください。

 ただし、ご自分の体と相談しながら、辛いものを食べるように心がけてください。特に病気をお持ちの方は、辛いものを食べる時は医師とご相談ください【註4】。
(文=西郷和真)

●参考
【註1】清水 利彦ら(臨床神経 2011;51:103-109)
【註2】Ibrahimi K, et al. Reduced trigeminovascular cyclicity in patients with menstrually related migraine. Neurology 2015;84:125-131.
【註3】カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)とは、末梢血管の拡張作用を有し、侵害受容器(痛みを感知する場所)が興奮すると、脊髄内終末や末梢神経終末から放出され神経性炎症を誘発させると考えられています。このため片頭痛治療にこのCGRPをブロックする薬剤の効果が期待されています。(参照 http://healthpress.jp/2018/01/post-3469.html)
【註4】カプサイシンを多く含むもので、宣伝されている「体脂肪を燃やす」「代謝を高める」「便秘を解消する」「美肌づくりに役立つ」「発がんを抑制する」などの有効性に関するヒトでの信頼できる十分なデータは見当たらないとされています。(国立感染症センターHPより)

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西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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