消費者庁は乳児用液体ミルクを「特別用途食品」として許可する基準を新設すると発表(depositphotos.com)
厚生労働省は、今年(2018年)3月12日、国内で流通していない乳児用液体ミルクの製造の規格基準(殺菌法や常温保存法など)をまとめた。
続いて5月15日、 管理栄養士や栄養学の専門家が集まる有識者委員会は、消費者庁が示したタンパク質の含有量などの基準案を了承したため、消費者庁は、乳児用液体ミルクを「特別用途食品」として許可する基準を新設すると発表。国内で製造・販売ができるようになった。
「乳児用粉ミルク」はOKでも「乳児用液体ミルク」はNG
特別用途食品は「乳児の発育や病人の健康回復などに適している」と表示できる食品。現在、表示基準は「乳児用粉ミルク」にあるが、「乳児用液体ミルク」にはない。
したがって、乳業メーカーが乳児用液体ミルクを国内で製造・販売するためには、原材料などの安全性の承認を厚労省から受けた後、さらに特別用途食品の表示の許可を消費者庁から受けなければならない。
厚労省は、今年の夏に乳児用液体ミルクの安全性の新基準を定め、消費者庁は、特別用途食品制度に乳児用液体ミルクの新基準を追加後、審査を経て許可することになる。
乳業界団体の一般社団法人日本乳業協会によれば、メーカーが安全性試験や品質試験などに取り組むため、製造・販売は、新基準が設けられた1~1年半後にずれ込む見込みだ。
乳児用液体ミルクのメリットは長期保存
乳児用液体ミルクのメリットは何か?
乳児用液体ミルクは、誕生から12か月までの乳児が母乳の代わりに飲めるように栄養成分を調整したミルクだ。北欧をはじめ、欧米諸国ではスーパーやドラッグストアなどで購入できる。
粉ミルクのように熱湯で溶かす手間がかからず、長期保存ができるので、育児の負担軽減や災害時の備蓄に役立つ。2016年に発生した熊本地震では、駐日フィンランド大使館から救援物資として配布されている。
食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」は、乳児用粉ミルクを「調製粉乳」、乳児用液体ミルクを「調製液状乳」とそれぞれ定義している。
基準作成のために日本乳業協会が厚労省に提出したデータによれば、乳児用液体ミルクは、乳児用粉ミルクと同様の栄養分を加え、常温保存できるよう容器に詰めて120度で4分間加熱殺菌する。容器は、缶、レトルトパック、紙パックになる。賞味期限は、缶とレトルトパックが9カ月~1年、紙パックが半年だ。
色は、缶とレトルトパックが粉ミルクよりわずかに茶褐色。紙パックは保存中に茶褐色が濃くなるものの、風味は同じだ。だが、時間がたつとミネラル分などが容器の底に沈殿するので、開封前に容器を振ってから飲用する。