座りがち生活が招く悪影響
さらに注目すべきなのは、この脳領域皮質の厚さという問題の場合、「各自の運動量との関連は取り立てて認められなかった」という点だ。事実、普段の生活で比較的運動をしていると答えた被験者でも、座位時間のほうが長ければ上記領域の皮質が薄い傾向を読み取れたそうだ。
もっとも専門家の一人、米国ズッカー・ヒルサイド病院のMarc Gordon氏はこう述べる。
「なにも座るという行為全般が脳に悪影響を与えるわけではないと思う。問題は座っている間に、それぞれが何をしているかだ。その内容によって影響は異なるだろう」
このタイプ別影響力の違いという意見には、Siddarth氏らも同意の見解を示しており、次のように述べている。
「座っている時間や状態は一緒でも、それが認知的な活動をしている人の場合と、ただテレビや映画を鑑賞しているだけの人の場合では影響上の差が生じる可能性も否めない」
ここでいう、「座りながらの認知的な活動」とは、たとえばがクロスワードを解くとか書き物をする、仕事上の書類を作成したり、コンピュータゲームで遊ぶのも、その範疇だとか。
日本人こそ、立ち上がれ!
かつてNHKの『クローズアップ現代』で「『座りすぎ』が病を生む!? 『座りすぎ』に注意」という特集が組まれ、趨勢となりつつある世界の取り組みを紹介した回があった。
「オーストラリア人よ、立ち上がれ!」と国が警鐘を鳴らし、高さ調整が可能な机の導入で立ちながら授業を受けられる小学生たちの様子が報じられていた。
一方、エコノミック・アニマルという過去の異名(蔑称!?)が健在なのか、わが国(民)は今日でも「座りすぎ大国」と呼ばれて、20の国や地域比較でも「7時間」の最長国だ。
前述のように、従来の研究でも座位時間の長さと心臓病や糖尿病との関連、あるいは早期死亡リスクが高まる点は指摘されてきた。
こうした忍び寄る健康リスクへの懸念から、日本でもスタンディングデスクを導入する企業も増えつつあるが……。
運動不足が真の原因ではなく、座ること自体が諸悪の根源かもなんて、そこまで斬新な示唆に傾聴/反映できる日本人経営者がいったい何人いるのやら。
(文=編集部)