オフィスワーカーは1日1時間の運動を(shutterstock.com)
デスクワークなどで日常的に座る時間が長いと健康を害する――。近年、そんな研究結果が相次いで報告されている。
心臓病や糖尿病、がんなどの病気を発症するリスクが高いだけでなく、寿命も短くなるというショッキングなものだ。
たとえば、45歳以上で1日に合計11時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べて、総死亡リスクが1.4倍高くなることが知られている。今春には、世界で年間43万人以上が「座って過ごす時間が長過ぎること」が原因で死んでいるという、ブラジル・サンパウロ大学予防医学のショッキングな報告もあった。
厄介なのは、健康維持推奨レベルの運動をしていても、座り過ぎていると、こうした健康リスクは減らないという点だ。最近では、運動はしているけど座り過ぎの人のことを「アクティブカウチポテト」と呼ぶらしい。
「座りっぱなし」の健康被害は避けられる
特に日本人成人の平日総座位時間は1日420分(中央値)にもなり、世界20カ国のなかでも最長。国民の多くが座り過ぎだ。
デスクワークが中心のオフィスワーカーにとってはどうしようもないが、あきらめるのはまだ早い。
1日8時間座っていたことでアップした死亡リスクは、1日1時間の運動で帳消しにできるというのだ。ノルウェーのスポーツ科学大学のオルフ・エーケルンド教授らによる男女約100万人のデータ分析から明らかになった。7月27日発行の英医学誌『Lancet』(電子版)に発表された。
研究グループは今回、北米や欧州、オーストラリア、日本などで実施された16件の調査に参加した45歳以上の男女100万5791人のデータを分析。すると予想通り、座っている時間が長いと死亡リスクが高くなることが確認され、特に心疾患や乳がん、大腸がんによる死亡リスクが高まることがわかった。
さらに、1日当たりの運動強度を「最低(1日5分以下)」「低い(25〜35分)」「高い(50〜65分)」「最高(60〜75分)」の4グループに分けて分析。
驚くことに、「最高」のグループは座り過ぎ(1日8時間)による死亡リスク上昇は認められなかった。つまり、1日当たり60〜75分の運動で、座り過ぎのリスクが帳消しになることが示されたという。