ゴースト血管の影響は認知症にもつながる(depositphotos.com)
4月1日(日)午後9時からNHKスペシャル「ゴースト血管が危ない~美と長寿のカギ 毛細血管~」が放送された。番組を観て衝撃を受けた人がいたかもしれない。万病の元と言われる「ゴースト血管」(Ghost vessels)とは何だろう?
動脈から静脈をつなぐ毛細血管の一部が消失(ゴースト)すると、血液が通わなくなり、血流機能が停止するので、血管細胞が壊死してしまう、それがゴースト血管だ。
血管研究の権威である大阪大学微生物病研究所の髙倉伸幸教授はゴースト血管をこう解説する――。
毛細血管が加齢などによって血管構造が破綻し、血管の途中で血液成分が漏れすぎるため、血液が末端まで届かなくなる状態が続くと毛細血管はボロボロになり、最終的に消失(ゴースト)してしまう。
髙倉教授は、血液が流れなくなった毛細血管があたかも幽霊のように消えていく様から「ゴースト血管」と名づけた。
血管の95~99%を占める毛細血管。その微細な細胞の隙間から血液が微量ずつ漏れ、約37兆個の細胞に酸素や栄養素を届けている。
だが、毛細血管という「栄養配送網」が細胞に酸素や栄養素を届けられなくなると、ゴースト血管になる。原因は何か?
ゴースト血管の原因は何か?
ゴースト血管の発生は、加齢も原因の一つだが、生活習慣の乱れが大きく影響している。睡眠不足をはじめ、糖分・脂肪分の過剰摂取などの偏った食生活のほか、ストレス、肌に浴びた紫外線量の増加も原因になる。
特に、毛細血管は睡眠中に修復されるので、睡眠時間が短くなれば、十分に修復されないため、酸素や栄養素の漏れが多くなり、ゴースト血管につながりやすい。
しかも、深刻な問題がある。ゴースト血管は自覚症状が少なく、あってもせいぜい冷え性くらいのため、異変を感じた時には、症状が進んでいる可能性が高いので、診断・治療が遅れがちになる。これは怖い。
髙倉教授は、20代から70代までの男女200人の被験者を対象に、「あっと社」が開発した採血不要の毛細血管スコープ「血管美人」を活用し、指先の毛細血管画像(密度、本数、長さ、太さ)を解析した。その結果、200人のうち21人がゴースト血管の危険ありと判定された。世代間の差が小さく、どの世代にも満遍なく「ゴースト血管持ち」が確認され、20代でも70代より毛細血管の状態が悪い人がいたほどだ。
髙倉教授によると、個体差はあるものの一般的におよそ1割~2割の人がゴースト血管の危険がある。早期のゴースト血管は老化を早め、重篤な病気にかかりやすくなるリスクが高いため、若年世代も決して油断はできないと指摘する。