下肢静脈瘤のある足(左)と健康な足(depositphotos.com)
脚の皮膚の表面に静脈の一部が盛り上がり、かゆみや痛みを伴うこともある下肢静脈瘤は、加齢に伴い誰にでも起こり得る疾患の一つだ。
長庚記念病院(台湾)のShyue-Luen Chang氏らの研究では、下肢静脈瘤のある人が「エコノミークラス症候群」としても知られる深部静脈血栓症(DVT)を発症するリスクは下肢静脈瘤がない人の約5倍に上ることが示されたという。詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」2月27日号に掲載された。
下肢静脈瘤と診断された20歳以上の患者23万9,616人を調査
下肢静脈瘤は中高年層を中心に高い頻度でみられる疾患で、米国では成人の有病率は約23%と推定されている。この疾患は一般的に重度の健康リスクに関連することはまれであると考えられているが、同じ血管の疾患でも手足の静脈に血栓ができるDVTや、できた血栓が流れて肺の動脈を詰まらせる肺塞栓症(PE)、足の動脈が狭くなったり詰まったりする末梢動脈疾患(PAD)は重度の健康リスクとなることが分かっている。
そこでChang氏らは今回、台湾の国民健康保険プログラムの保険請求データを用いた後ろ向きコホート研究を実施し、下肢静脈瘤とDVTやPE、PADとの関連について検討した。
ちなみに後ろ向き研究とは、過去のデータを収集して研究すること。コホート研究とは特定の要因に関係した集団と関係していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較する。つまり、過去の膨大なデータを収集し、下肢静脈瘤とDVTやPE、PADとが関係性があるのかどうかを調べたということだ。
対象は、2001~2013年に下肢静脈瘤と診断された20歳以上の患者23万9,616人のうち、PAD、DVT、PEの診断歴がある患者を除外した21万2,984人(平均年齢54.5歳、女性69.3%)と、同数の年齢や性をマッチさせた下肢静脈瘤のない対照群(同54.3歳、70.3%)とした。追跡期間は7.3~7.8年だった。
Chang氏らがCox比例ハザードモデルを用いて解析した結果、下肢静脈瘤群では対照群と比べてDVTリスクが5.3倍、PEおよびPADのリスクが1.7倍であることが明らかになった。
この結果を踏まえ、Chang氏は「下肢静脈瘤がある患者に対しては、慎重に監視を続け、早期に評価する必要があるかもしれない」との見方を示している。