エコノミークラス症候群などを防ぐ「貧乏ゆすり(ジグリング)」の驚異的な効用

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貧乏ゆすり(ジグリング)はエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)などの予防に(depositphotos.com)

 誰が言い放ったのだろうか――。「笑えるうちは貧乏じゃない!」。我が来し方を振り返りつつ、そうかもしれないとつくづく考える。笑える貧乏に何か利点があるか否かは怪しいが、日常的な貧乏ゆすりは、健康にいい明らかな理由があるらしい。

 米国ミズーリ大学のジェイム・パディラ助教授(栄養・運動生理学)は、「貧乏ゆすりは下肢の血流を増加させ、驚くべきことに動脈機能の低下を十分に予防しうることが判明した」と発表している。

 どのような研究だろう? まず、若者11人に椅子に座ってもらい、「脚を1時間トントンと動かしながら4分間休む群」と「まったく動かさない群」に分け、3時間にわたって脚の血管機能の変化を比較した。

 その結果、「動かした群」の若者の脚は血流が増加したが、「動かさなかった群」の若者の脚は血流が減少していた。パディラ助教授は「立ったり歩いたりすることで、できるだけ座り続けないようにするべきだが、それが無理ならば代わりに貧乏ゆすりをするとよいかもしれない。だが、座っているときに脚を動かしても、歩行や運動の代わりになるわけではない」と強調している。

 長時間、狭い空間に座っていると、下肢に血流が流れにくく血栓ができやすくなることから、血栓が肺に流れ込むため肺動脈が詰まり、肺の酸素吸収の機能が低下する――。これが「エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)」だ。

 ところが、貧乏ゆすりをすれば血流が増加するので、静脈血栓塞栓症を防ぎ、健康維持に寄与できるのだ。

貧乏ゆすりの多い女性は死亡率が37%も低下!

 もう一つの研究を見よう。英国のロンドン大学とリーズ大学の研究グループは「貧乏ゆすりをすれば、女性が病気で死亡するリスクを下げる可能性がある」とする研究成果を『American Journal of Preventive Medicine』(2015年9月23日号)に報告した。

 発表によると、英国の女性約1万3000人(37〜78歳)を対象に、1日の座っている時間、貧乏ゆすりの有無、身体的な活動、食事、喫煙、アルコールの飲用の状況、平均12年間の死亡率の追跡調査を行った。

 結果は明らかだった。1日7時間以上「座る時間」があり、かつ「ほとんど貧乏ゆすりをしない女性」は、「座る時間」が1日5時間未満の女性に比べて早期死亡リスクが30%以上も高かった。一方、「貧乏ゆすりの多い女性」は、1日5〜6時間座っていても、座る時間が1日5時間未満の女性よりも死亡率が37%も低かった。また、貧乏ゆすりを多くする人は、BMI、グルコースやインシュリン反応など、健康に関連する指数が良好だった。

 研究者は「これまでは座る時間が長い人の場合、立ち上がって休憩することで、健康へのリスクを低減できる。だが、貧乏ゆすりをするだけで、健康に有益だと示した研究はこれが初めてだろう」とコメントしている。

 1日のうちで座っている時間が長ければ長いほど、細胞の寿命や老化に影響を及ぼすテロメアの劣化が進むので、DNAの寿命を縮める。

 椅子から立ちあがって屈伸をするだけで、下肢に滞っていた血流が促されるので、脳の働きがスムーズになる、集中力が増す、ストレスを解消するなどの効用が期待できるのだ。

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