脳の異常が確認されていた犯罪者の全員が「ある特定の脳内ネットワーク」と強く関係(depositphotos.com)
米バンダ―ビルド大学メディカルセンター(VUMC)の神経学助教授であるRichard Darby氏が主導する研究班は、「犯行前に脳の異常(脳病変)が確認されていた犯罪者17人」の脳画像データをマッピングした。
その結果、各犯罪者たちの障害部位は十人十色、さまざまな脳領域に位置してはいたものの、17人全員の病変が「ある特定の脳内ネットワーク」と強く関係している共通項が示唆された。
報告の詳細は昨年(2017年)末の『Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)』(12月18日オンライン版)に掲載。
主筆のDarby氏は「今回の結果は、脳の機能不全がどのように犯罪行為に寄与するかのメカニズムを理解する一助となるだろう」と述べ、さらに「病変の予防や治療のための重要な一歩となるかもしれない」との見解を示した。
研究のきっかけは1966年の銃乱射事件
今回の研究者たちが「脳異常と犯罪行為の関係性」について従来以上の強い関心を寄せたきっかけは、テキサス大学オースティン校で1966年に起きた銃乱射事件だった。
死亡13人・負傷31人の大惨事を引き起こした末、銃撃戦で射殺された犯人(チャールズ・ホイットマン)は、「事件前」から頭痛を訴え、自ら「人格が変わった」と周囲に明かしていた。事件後、犯人の「脳腫瘍」が判明して以来、研究者の耳目を集めた。
Darby氏ら研究陣も「脳病変の出現」と「犯罪行為の開始」が関連しているという前提から解析を行なった。脳活動の地図に加え、健康なボランティアから集められた大規模なデータ集を使用した。
さまざまな場所の脳病変が「幻覚」や「妄想」を引き起こす理由に関しては、他の疾患との関連などを理解するため、その筋の研究で知られるハーバード大学医学部のマイケル・フォックス氏(神経学助教授)の知見も大いに参考とされた。
その研究報告によれば、外傷性脳障害患者の約9%、そして前頭葉障害患者の14%に「暴力や犯罪が発生している」と示唆されているそうだ。