日本発の「リキッドバイオプシー」のプロジェクトも始動
日本でもリキッドバイオプシーの臨床研究はスタートしている。
2017年8月、国立がん研究センター中央病院は、リキッドバイオプシーの実用化をめざす臨床研究を立ち上げた。この研究では、がんと診断された患者約3000人と、健常な男女約200人ずつの合計3440人分を対象にデータを集めている。2020年をめどに、患者から新たに採取した血液をリキッドバイオプシーによってスクリーニングし、まずは自由診療の枠組みで人間ドックのメニューなどを実用化する計画だ。
この研究の重要ポイントは、がん細胞が分泌する「マイクロRNA」に着目し、乳がんや大腸がんなどに特徴的なマイクロRNAを組み合わせながら、がんの早期発見につなげる目標を掲げている点だ。対象となるのは「胃がん」「食道がん」「肺がん」「肝臓がん」「胆道がん」「膵臓がん」「大腸がん」「卵巣がん」「前立腺がん」「膀胱がん」「乳がん」「肉腫」「神経膠腫」の13種類だ。
マイクロRNAとは、20個前後の少数の塩基から成るRNA(リボ核酸)で、ヒトの体内に2000種類以上もある。がん細胞が分泌し、細胞間の情報伝達を司るエクソソームや、エクソソームが内包するマイクロRNAが、がんの増悪・転移に深く関係している事実が判明している。
さらに、マイクロRNAによるがんのスクリーニングにAI(人工知能)を活用すれば、がんをさらに高精度に検出できる可能性が大きいことから、研究が進んでいる。
リキッドバイオプシーについては、本サイトの以下の記事にも詳しいので参考にしてほしい。
●シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第19回
リキッドバイオプシーは「がん医療変革」につながる!臨床応用可能であることを示した点が大きい
今後もリキッドバイオプシーの進化に期待したい。
(文=編集部)