シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第17回

まともな免疫療法の科学的検証を~がん患者の半数が治癒可能になる時代⑤

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まともな免疫療法の科学的検証を~がん患者の半数が治癒可能になる時代⑤の画像1

免疫療法の混乱は今後どうなっていくのか?(depositphotos.com)

 今日は、日本滞在時に感じた、免疫療法に対する違和感について話をしたい。ちなみに今日から始まっている米国癌学会で、免疫療法とリキッドバイオプシーは中心的話題だ。色々な人と日本に次期がん対策に関する話を聞いたが、残念ながら、リキッドバイオプシーに対する反応は低かったし、「免疫療法」に対して批判的な声が消えないようだ。

 科学として免疫療法は確固たる位置を築いたことは明白だ。日本では、いい加減な免疫療法が広がることを問題視し、憂慮している人が少なくないようだが、欧米ではいろいろな免疫チェックポイントを対象とする治療薬や多種類の免疫療法の検証が進んでいる。

 「怪しい免疫療法が広がることを懸念して、まともな免疫療法を抑え込む」ことは非科学的だ。国際的な環境は、「何かが起こる危険があるから、何もしない」といっているような悠長な状況ではない。「真っ当な免疫療法の科学的な妥当性を評価しつつ、怪しげな免疫療法を抑え込む」ことが、国・学会・医学研究者・医師を含む医療従事者の使命のはずだ。

 このブログでも何度も紹介したが、現在、保険適用となっている免疫チェックポイント抗体は、分子標的治療薬に比べて効果は長期間継続するものの、効果を発揮するまでに少し時間がかかる場合が多い。しかし、有効率は20-30%と限られている。

 薬価が高いことが問題になっているが、分子標的治療薬と比べて桁外れに高額であるわけでもない。効果がない患者さんに対する無駄な投与や自費診療で治療を受けている患者さんや家族への経済的負担が課題なのだ。

 米国では、図に示すような、分子標的治療薬と免疫療法の長所を生かして(短所を補うために?)、二つの治療法を併用する臨床試験が多数実施されている。分子標的治療薬で早くがん細胞を叩き、その間に免疫を活性化させて、長期生存する患者さんの割合(治癒率?)を高めようとしているのである。このまま、日本で何もしないでいれば、高額の医療費負担となって跳ね返ってくるのは必至の状況だ。

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中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長を経て、2012年4月より現職。

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