「斎藤さんだぞ!」はリスク上昇なし
東京大学の研究班が、米国内における11年以上の追跡調査など3つの先行論文をメタ解析したところ、男性型脱毛症患者の心疾患リスクが、そうでない男性よりも「33%」高かったとの報告がある。しかも年齢を重ね、55~60歳の時期を迎えると「44%」にもなるとの結論が下された。
さらに別種の3つの過去研究をメタ解析したところ、男性型脱毛症男性の心疾患リスクは、健康な同性層よりも「70%」も高く、とりわけ若年時から男性型脱毛症を発症している男性においては「84%」も高いとの違いが読み取れた。
それも、リスク上昇が顕著なのはなぜか「頭頂部」に生じる男性型脱毛症に限られており、「生え際後退系」には上昇傾向がないという点も不思議といえば不思議だ。トレンディエンジェルの斎藤さん型の方々は安心というわけか……。
「男性型脱毛症と若白髪は、全体的な心血管リスクに影響をあたえる生物学的年齢の指標である可能性が否めない」(前出・Sharma氏)。
やはりU.N.メータ研究所心臓研究センターの同僚である、Dhammdeep Humane氏は、次のように語る。
「男性型脱毛症や若白髪のある男性を診る現場の医師たちは、冠動脈疾患の監視をより強化し、健康的な食事や日常の運動、ストレスへの対処などを通した生活習慣の改善を指導すべきです」
もっとも今回の研究は、これらの予測因子と冠動脈との関連を示しているに過ぎない点も研究陣は強調している。
しかし、その上で「その因果関係がさらなる研究を通じて証明されるまでは、男性型脱毛症や若白髪のある男性に関しては(コレステロール低下薬の)スタチン療法は奨めるべきではない」との見解を、彼らは述べている。
なお、学会発表された研究報告は査読を受けた後、医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされて扱われる。
(文=編集部)