母乳の味は母親の食事で変わる?(depositphotos.com)
ネットを検索していると、お母さんが脂っこい食事を食べると母乳が「まずく」なるとか、「おいしい」母乳にするためには白米が一番、という説をよく目にします。一方で、お母さんの食事と母乳は関係ありません、ときっぱり断言するドクターもいます。一体何を信じたら良いのでしょうか?
味覚だけでなく香りが非常に重要
おいしさにはいくつもの構成要素がありますが、味覚だけでなく香りが非常に重要です。今回は母乳の匂いについて調べてみました。
モネル化学感覚研究所のMennella博士は、母乳の匂いに関する研究結果を1991年に『Pediatrics』誌に発表しています(注1)。8人のお母さんが、1.5gのにんにくエキスが入ったカプセルまたはプラセボのカプセルを飲み、前後数時間の母乳を採取して、その匂いを調べるとともに、赤ちゃんの母乳の飲み具合を検証しました。
匂いの判定は11人の成人の判定人によって行われました。その結果、プラセボカプセルを飲んだ前後では匂いに変化はなかった一方で、にんにくカプセルを飲んだ2~3時間後の母乳は、にんにくのような匂い、または強い匂いがすることがわかりました。
また、にんにくカプセルを飲んだ時のほうが、赤ちゃんがおっぱいに吸い付いている時間は有意に長く、吸う回数も多かったのです。一般的なイメージとは違い、にんにくの匂いだから飲まないのではなく、逆に良く飲んだということのようです。
では、赤ちゃんはどんな匂いを好むのでしょうか?
カレーを食べると羊水からスパイスの匂いが
赤ちゃんはお母さんのお腹の中でかいでいた羊水の匂いを好むことがわかっています。
1998年の『Child Development』誌にMarlier博士が発表した論文(注2)によると、生後数日の赤ちゃんの近くにお母さんの羊水または水を染み込ませたガーゼパッドを置いたところ、赤ちゃんは有意にお母さんの羊水のパッドの方向をよく向きました。また、お母さんの羊水と他の女性の羊水で比べると、有意にお母さんの羊水のパッドの方向を向くこともわかりました。
そして羊水の匂いにも、お母さんの食事が影響するという研究があります。1985年に、カレーを食べたお母さんの羊水からスパイスの匂いがしたケースや、本来、無色透明の羊水に黄色い色がついていたというケースの報告があります(注3)。