お母さんの声は胎児に聞こえている/shutterstock
お母さんのお腹中にいる時、赤ちゃんは羊水に包まれて生きている。ちょうどプールの中に潜っているような感じだ。外の音は聞こえないが、お母さんの体内からダイレクトに響いてくる声は、赤ちゃんによく届く。
話している言葉の意味は分からないが、赤ちゃんは、声の音色、話し方、話すリズム、スピードなどを聞き慣れて、記憶している。つまり、産まれてからも、お母さんの声を聞き分けるだけでなく、他の女性の声を区別して聞き分けができる。
赤ちゃんは、男性の低い声よりも聴き取りやすい女性の高い声によく反応するようだ。最初は、お母さんの声だけを聞き分けるが、お父さんの声にもすぐに慣れる。
お母さんは赤ちゃんに聞き取りやすく話している
誰でも経験があるだろう。赤ちゃんに話しかける時は、少し高い声でゆっくりと、しかも短いフレーズで話しかける。万国共通の「マザリーズ(お母さん言葉)」だ。マザリーズは、地声より高い声で少しイントネーション(抑揚)を強めた話し方なので、赤ちゃんが聞き取りやすい。
マザリーズは、多くの国では大人の話す言葉とそれほど違いはない。だが、日本では、言葉の言い換えや、乳幼児特有の発音などを真似た「赤ちゃん言葉」を使うことが多い。赤ちゃん言葉には、「まんま」「ワンワン」「ポンポン」のような反復語や、「おめめ」「おてて」「おそと」のような接頭辞の「お」を付けて聞き取りやすくした単語が少なくない。
「ワンワン、走ってるよ」「ポンポン、痛いの?」のように、助詞の「てにをは」を省いたり、名刺と動詞のつながりを強調する特徴がある。このような「赤ちゃん言葉」は、赤ちゃんが聞き取りやすく、理解しやすい。
また、日本語は、「ニコニコ」「ヌクヌク」などの擬態語、「クルクル」「ピコピコ」など擬声語などのボキャブラリーが豊かなことも、「赤ちゃん言葉」が多い理由かもしれない。
赤ちゃん言葉を使いすぎると、赤ちゃんが正しい言葉や単語を覚えないのではと心配する人もいる。だが、赤ちゃん言葉は、あくまでも赤ちゃんだけの言葉だ。赤ちゃんの成長につれて使わなくなったり、大人が使う言葉や単語を覚えたり、話すようなる。それが、逞しくも賢い赤ちゃんが秘めた強かな成長力なのだ。
(文=編集部)