乳房インプラント「血液がん」の発症リスクが高まる?(depositphotos.com)
米ペン・ステート・ヘルス・ミルトン・S・ハーシー医療センター形成外科のDino Ravnic氏らの研究チームは、「テクスチャードタイプ」と呼ばれる表面がざらざらとしたタイプの「乳房インプラント」を使用すると、まれな「血液がん」の一種である「未分化大細胞リンパ腫(ALCL)」の発症リスクが高まるとするシステマティックレビューを「JAMA Surgery」10月18日オンライン版に発表した。
発表によれば、過去10年間に乳房インプラントに関連したALCL(BIA-ALCL)が300件以上報告されているが、実際にはさらに多い可能性があることからレビューが実施された。
Ravnic氏らは、BIA-ALCLの発症機序やリスク因子、治療の実態などを調べるため、1997年8月~2017年1月に発表された文献115件に記載の患者93人と、同センターの患者2人の計95人のデータを詳細に分析した。
その結果、ほぼ全てのBIA-ALCLの症例が、テクスチャードタイプのインプラントに関連していた。その発症機序について、Ravnic氏らは「BIA-ALCLはインプラント周辺における慢性的な炎症に起因する可能性があり、テクスチャードインプラントの微小な孔に入り込んで増殖した組織が、その炎症を長引かせるのではないか」と説明している。
Ravnic氏らによると、過去10年間に報告されたBIA-ALCL患者のうちの半数以上は、「乳がん治療」のために乳房を切除し、乳房インプラントを用いた再建術を受けていた。BIA-ALCLの標準的な診断基準がないにで、正確な発症率は不明だが、年間発症率は乳房インプラントを挿入した女性の「3万人当たり1件」と推定される。BIA-ALCLの発症時期は、乳房インプラントを挿入後、「中央値で10.7年後」だ。
乳房インプラントには表面がなめらかな「スムースタイプ」と、凹凸がありざらざらとした「テクスチャードタイプ」があるが、ほとんどのBIA-ALCLがテクスチャードタイプのインプラントに関連していた。
Ravnic氏らは「現在、原因を調査中だが、テクスチャードタイプのインプラント製品が発売された1990年代以降、この種のがんが頻発している。また、テクスチャードタイプはメーカーにかかわらずALCLとの関連が認められるが、スムースタイプはALCLとの関連は報告されていない」と説明している。
ただ、多くの症例で周囲の体液や組織中のリンパ腫細胞の検査をしないままインプラントを抜去しているため、これらの関連性の断定は困難だ。
Ravnic氏らは、乳房インプラントを用いた治療に携わる全ての医師に対し、BIA-ALCLのリスクについて認識し、初期症状に気付けるようにしておくよう助言している。また、乳房インプラントを挿入する患者に対しては、術前にリスクを説明し、術後に定期的なチェックを徹底するように必ず伝える重要性を強調している。