連載「死の真実が〈生〉を処方する」第43回

赤ちゃんの突然死を防ぐ! 「うつぶせ寝」「添い寝」の危険性に注目を

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誤った情報が招く危険な「うつぶせ寝」

 赤ちゃんは、生後しばらくの間は首がすわっていません。また、寝返りも打てません。「うつぶせ」で寝かせると、囗や鼻は布団に埋もれてしまい窒息してしまうのです。

 完全に囗や鼻が閉塞しなくても、鼻囗周囲の狭い空間に自分が吐いた空気(酸素が少なく二酸化炭素が多い)が溜まります。これを再び吸うので、十分な酸素が供給されず、死に至ることもあります。

 このような「うつぶせ寝」の危険性は、1990年代から欧米を中心に指摘されていました。特にイギリスやオーストラリアでは、「仰向け」で寝かせる「Back to Sleep」キャンペーンを行ったことで、乳幼児の予期せぬ死亡が明らかに減少したというデータもあります。

 今や、「うつぶせ寝が危険」なことは常識。残念ながらわが国では、今でもうつぶせ寝をさせている親がいると聞きます。頭の形が良くなる、寝やすいなど誤った情報が氾濫しているのも原因のようです。

母親と「添い寝」の赤ちゃんが窒息死

 家族が<川の字>に寝るのは、日本に古くからある習慣です。そのため、一つの布団に親と乳幼児が「添い寝」するのに違和感を覚える人は少ないようです。

 しかし、これも窒息の危険因子といわれています。母親にくっつくように乳幼児が寝ていた場合、乳幼児の顔が母親の体に密着して窒息することがあります。

 また、布団で授乳しながら母子がそのまま寝てしまい、気が付いたら乳幼児が窒息していた――ということもあります。さらに、母子がソファで寄り添っていてそのまま寝てしまったら窒息していたという報告もあります。

 このように、乳幼児との添い寝も、予期せぬ死亡のリスクだと指摘されています。

 もちろん、親子がスキンシップを深めることは重要です。「Baby Friendly」と言って、出産後間もなくから母乳を与えることなども推奨されています。しかし最も重要なことは、乳幼児の睡眠環境に十分配慮して危険を回避することです。

 米国の小児科医などが指摘するのは、「乳幼児はベッドに一人で寝かせる」「柔らかいふわふわした毛布などを避ける」「大きな枕などはベッドに置かない」など。

 また我々は、「子どもがベッドから落ちてはたいへん」と考え、ベッドの端にバリケード代わりに大きな枕や大きな布団を置いてしまいがち。しかし、これが窒息を招く原因になるそうです。子どもが寝入るまで見守っても「添い寝はしない」ことです。

 わが国の多くの家庭では「添い寝」が行われており、欧米でも親の学歴が高い家庭でも頻繁に見掛けるという報告があります。しかし、近年では新たな危険として指摘されています。

 私は、乳幼児の予期せぬ死亡に対して、解剖や諸検査を行い原因を究明しています。「うつぶせ寝」や「添い寝」で窒息した乳幼児に遭遇することもたびたびあります。

 川の字で親子で寝ていたところ「家族がはいだ掛け布団が顔にのって」「両親に挟まれて顔が入り込み」「授乳後に顔が乳房の下に埋もれて」……さまざまな窒息ケースを見てきました。

 わが国でも「添い寝」の危険性を伝えていく必要性があるでしょう。もちろん、親子の絆やスキンシップは保たれるべき。子どもを孤立させるわけではなく、安全な睡眠環境を確保することが優先です。

 安易に「乳幼児突然死症候群」と決めつけず、正確な原因を究明して、その結果をご家族に話して次の予防につなげることが重要です。同じことを繰り返していては、新たな生命を授かっても、再び不幸な目に遭わせてしまうことになります。

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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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