歯磨き「食後1日3回」は世界の中では少数派? 回数より「歯の磨き方」が問題

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食後の歯磨きで歯が削れる?

 虫歯ができる過程は、以下のとおりだ。

①ミュータンス菌が「糖類」を利用して「不溶性グルカン」というネバネバの物質を作り出す。

②不溶性グルカンが歯の表面にくっついて「歯垢」を作る。

③歯垢の中でミュータンス菌が多量の「乳酸」を生み出すため、乳酸がだ液に薄められず「脱灰(だっかい:歯の表面のエナメル質などからリン酸カルシウムの結晶が溶出する現象)」が起こり、虫歯が引き起こされる。

 「歯垢は食後8~24時間で形成される」という説がある。定説はないようだが、食後3分で形成されることはなさそうだ。「食後3分以内に歯を磨く根拠」は見つからない。

 「食後すぐに歯を磨くと、むしろ虫歯のリスクを高める」と主張しているのが『歯はみがいてはいけない』(講談社)の著者である歯科医の森昭氏だ。食事の糖分で口の中が酸性に傾いている状態で歯磨きをしたら、歯が削れてしまうということだ。

 森氏の著書がとても売れているので、彼の主張に「なるほど」と思った人は少なくないのだろう。

 厚生労働省の「平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要」によると、45~54歳の「う歯のない者」は0.5%。つまり日本人の99.5%が虫歯を持っている。この数字から「333運動」は果たして意味があったのか、疑問を持つ人が多いのかもしれない。

 しかし、日本小児歯科学会や日本口腔衛生学会は「食後の歯磨きNG」説を否定し、一般的な食事で口の中が大きく酸性に傾くとは考えにくく、「食後に歯磨きしても歯が削れるようなことはないだろう」という見解を示している。

歯を磨く回数よりも「歯の磨き方」が問題

 「食後の歯磨きNG」説への賛否はともかく、歯科医の多くが歯を磨く回数よりも「歯の磨き方」を問題視している。

 1つは力の入れ過ぎ。ゴシゴシと強く磨くことで、歯の表面と歯茎を傷つける。ブラシの毛先を軽く歯に当てて振動させるだけで、歯の細菌は落とせる。もう1つは磨き残し。1本ずつ丁寧に歯の細菌を落とすことが重要だ。

 思い返せば、筆者が小学生の頃に指導された歯磨きはローリング法で、「ピカピカになるまでしっかり磨きましょう!」なんて言われたので、子ども心にまじめに取り組んだものだ。

 しかし、大人になって「そんな磨き方だから歯と歯茎の間の汚れが取れないし、歯の表面が削れていますよ」と歯科衛生士から注意を受けショックを受けた。

 <昔の常識=今は非常識>ということは珍しくない。歯磨きについても最新情報にアップデートすることが大事だろう。
(文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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