歯の健康にも経済格差が!?(depositphotos.com)
1980年代より以前に子ども時代を過ごした世代は、小さい頃に虫歯ができてしまい、嫌々歯医者に通った経験のある人がかなり多いのではないだろうか?
実は日本の子どもたちの虫歯は、近年、大幅に減ってきている。
文部科学省の調査によれば、1970年代には国全体で子どもの9割超に虫歯があった。しかし現在は、幼稚園〜高校生を含めてすべて5割以下。
つまり、半分以上の子どもには虫歯が1本もない。未処置の虫歯がある、虫歯が現在進行形の子どもに限れば、小学生でも25%を切る(学校保健統計調査より)。
きっかけは、国が78年に小学校教員向けに指導書を作り、児童の生活改善に乗り出したことだ。小児専門や虫歯の予防・指導に力を入れる歯科が増え、学校や地域でも虫歯予防を推進。子どもの歯の「仕上げ磨き」が定着するなど、親の意識の変化も大きいという。
しかしその一方で、近年は歯の健康の格差が広がり、「口腔崩壊」と呼ばれる状態の子どもの存在が問題になっている。
「口腔崩壊」とは、10本以上の虫歯や歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまくかめない状態を指す。栄養状態が悪くなり、体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。
そして、子どもたちが歯科を受診できない背景として、貧困問題との関連も指摘されているのだ。
子どもたちの貧困問題が「口腔崩壊」の背景に
兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかって「要受診」とされた約3万5000人のうち、歯科を未受診か、受診したかどうかわからない児童・生徒が約2万3000人、65%にも上ることが、県保険医協会の調査でわかった。
さらに未治療の虫歯が10本以上あるなどの「口腔崩壊」の子どもがいると回答した学校の割合は、35%に上った。なかには「乳歯が全て虫歯の児童が数人いる」「歯肉炎も重く、パンが食べられない」などの事例もあったという。
今回の調査は今年(2017年)3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施したもの。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(合計児童・生徒数11万415人)から回答があった。
「要受診」とされながら受診が確認できなかったのは、小学校で46%、中学校で64%、高校は84%と年齢が上がるごとに高くなり、特別支援学校では62%だった。
また、口腔崩壊の児童・生徒が1人でもいる学校は、中学では19%、高校では47%と増加する。中学生は永久歯に生え替わる時期のために減っているとみられるが、高校生の場合は、一生使う永久歯が蝕まれていることになる。
今回の調査では、口腔崩壊の児童・生徒は合計346人。同協会は「単純計算で県内に1500~2000人程度と推定できる」としている。
そして、口腔崩壊の児童・生徒の家庭状況について聞いたところ、「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」が33%、「経済的困難」が32%と、貧困問題が目立った(複数回答)。