「オキシドール」による消毒が、むしろ傷の治りを悪くさせる(depositphotos.com)
子どもの頃、転んでケガをすると「オキシドール」を塗られた。オキシドールが傷に染みる痛さといったら、傷ができたときの比ではない。シュワシュワと出てくる泡を見ながら、「これで傷が治るのだから」と激痛を我慢していたものだ。
このような傷の治療法は、過去の遺物と言ってもいいだろう。というのも、むしろ消毒が傷の治りを悪くさせることもわかってきているからだ。
消毒薬が「上皮細胞」を破壊する
ところが、学校の保健室では相変わらず、子どものすり傷に消毒薬が使われていることがある。傷を水道水で洗うだけだと、「子どもがケガをしたのに、学校では消毒もしてくれないのか」と保護者から苦情が入ることもあるようだ。
「これまで消毒薬を使って傷が治っているのだから、やめる必要はない」という意見も強いらしい。
ケガに消毒薬を使うか? 使わないか? あなたはどちら派だろうか?
まずは、オキシドールなどの消毒薬を使ったときに生じる「痛み」について検討しよう。この痛みは、オキシドールによって私たちの「細胞が傷つけられている」ことで生じている。いわば「細胞の悲鳴」なのだ。
オキシドールは「過酸化水素(H2O2)」の水溶液である。オキシドールを傷口に塗ると「活性酸素」が発生し、傷に付着している細菌を死滅させる。
そこで問題になるのは、活性酸素が細菌だけでなく、私たちの細胞にもダメージを与えることだ。
活性酸素についてはすでにご存じの方も多いだろうが、「がん」や「老化」の原因物質とされている。活性酸素は反応性が高く、周囲にあるタンパク質や脂質、糖質などを酸化する。
たとえば、皮膚が大量の紫外線を浴びると活性酸素が発生する。こうして皮膚の脂質が酸化されると、シミが発生しやすくなる。また、活性酸素が細胞に障害を与え続ければ、皮膚がんのリスクが高まる。