トリクロサンは使われていないのか?(depositphotos.com)
昨年9月、FDA(米国食品医薬品局)は、殺菌剤(トリクロサン、トリクロカルバンなど19種類)入り抗菌せっけん(日本では「薬用石けん」で販売)の販売を禁止すると発表しました。その後、事態は改善しているのでしょうか?
FDAは、販売禁止にする理由を、「消費者は、抗菌成分を含む石けんが細菌の繁殖を防ぐと思っているかもしれません。しかし、その成分が一般的な石けんを使った手洗い洗浄よりも、感染予防に優れているという科学的証拠をわれわれは持っていません。とくにトリクロサロンは効果が疑わしいだけでなく、抗菌成分を長期間にわたり使い続けることで、健康への悪影響を及ぼす可能性があるとのデータがあります」(FDA医薬品評価研究センターのジャネット・ウッドコック所長)と表明しました。
FDAの禁止措置を受け、厚生労働省は、FDAが指摘した19成分を使った薬用石けんについて、メーカーに他の成分に切り替えさせるよう指導しろとの通知を都道府県に出しました。
すでにEUは2015年にトリクロサンの衛生用品への使用を禁止にしています。米国や日本の対応は少し遅れていますが、厚労省にしてはいつになく素早い対応といえます。
その大きな理由は、抗菌剤は新たな耐性菌を生み出す危険性があるからです。米国医師会(AMA)は、すでに2002年に「抗菌剤入りの洗剤を日常的に使うことにより、健康被害や耐性菌を生みだす危険性がある」と警告しています。その危険性が巷に氾濫する抗菌グッズによってさらに高まっているのです。