連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第9回

人間とパンダの食の進化は真逆? 本来は「食べていなかった」ものが主食になった

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人間とパンダの食の進化は真逆?(depositphotos.com)

 しばしば耳にする話で、「日本人はずっとおコメを食べて来た農耕民族なんだから、毎日三回ちゃんとご飯を食べないと体を壊します」というのがありますよね。ずっと以前から、そのような主張をする方々が繰り返し現れますが、彼らがその主張の科学的な根拠を示すことはありません。

 日本人は、人類は本来何を食べていた生物なのか、きちんと考えてみませんか? そのために、まずはパンダの話をします。

草食動物は「草」ではなくて「消化管内細菌」から栄養を摂取している

 ジャイアント・パンダは中国のネパール地方に住んでいる特殊な熊です。その愛らしい外見とユーモラスな仕草、笹を食べる草食で攻撃性も低いことから、世界中で愛されています。

 でも、彼らの「歯や手の形」や「消化管の構造」を見ると普通の熊であり、本来、草食ではなくて肉食の生き物であったと考えられています。

 では、そもそも、草食動物に特徴的な体の構造とはどういったものでしょうか? それは「①植物を採取するのに適した手や体の形であるか」「②植物食に適した歯であるか」、そして「③食物繊維(セルロース)を発酵させるのに適した構造が消化管に存在するか」により判断されます。

 わかりやすいので、③の消化管の構造について注目してみます。

 たとえば、牛には「4つの胃」があり、それらの胃に入れた食物を口に戻して、もう一度噛む、反芻(はんすう)動物であることが知られています。牛の場合、「最初の3つの胃」では消化・吸収はほとんど行いません。噛んだ草を入れたり出したりするだけの、それらの3つの胃には、常在細菌がいて、牛がかみ砕いた草を栄養源として繁殖しています。草に含まれる炭水化物のほとんどは、セルロースという難消化性の物質であり、それを哺乳類が自前の消化液で消化することはほぼ不可能です。

 しかし、セルロースを栄養源として増殖することができる細菌を胃の中に飼育しておけば、彼らが胃の中でセルロースを利用して、さまざまな栄養素を生みだしてくれるのです。溶けた草と増えた細菌たちを「4番目の胃」でまるごと消化吸収してしまえば、牛は労せずして細菌が作り出したアミノ酸や脂肪酸を栄養として摂取することができます。

 草食動物の多くは、このような「細菌でセルロースを分解する消化管構造」を持っています。例えば齧歯類(ウサギやネズミなど)の盲腸はとても大きくて、穀物を好んで食べることで知られているマウスにしても巨大な盲腸を持っています。それらの器官で細菌が栄養を作り出してくれるのを待ち、細菌の死骸ごと吸収するわけです。草食動物は「草食」ではなくて「細菌食」と言い変えてもいいのかもしれません。

パンダはやむなく笹を食べてゴロゴロしている

 さて、「熊」であるパンダには、そのような「腸内細菌を効率よく繁殖させてセルロースを分解するための消化管構造(細菌培養装置)」がありません。短い盲腸しか持っていませんし、胃も一つしかなくて反芻もしません。歯も牛や馬ほどには上手に葉っぱをすりつぶせず、そのような消化管構造では、笹の葉だけからあの巨体を維持する栄養を摂取するのは極めて難しいはずです。

 ですが、彼らの消化管には「笹の葉を分解する細菌」がたくさん住みついていることがわかっていて、そのおかげで笹の葉だけで生きていけるのです。これは笹の葉の表面に住みついていた細菌が笹と一緒にパンダの祖先に食べられて、パンダの腸まで生きてたどり着いて、繁殖に成功したものだと推測されます。

 とはいえ、肉食の熊の腸管は効率の良い「細菌培養装置」ではないので、細菌はあまり効率よく増えることができません。そこで、パンダは細菌にセルロースを分解して増殖する時間をたっぷり与えています。笹を食っちゃあ寝、食っちゃあ寝でごろごろしているし、エネルギーを消費しないように仲間同士の争いも避けて仲良く暮らしているわけです。

 ほかの強い生物に追いやられて高地に逃げ、食料が笹の葉しかなかったのでやむを得ず適応したものと考えられ、好んであのような食生活・ライフスタイルを選んだわけではなさそうです。

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