消化されたグルコサミンが関節に浸透するのかという疑念
たとえば、アメリカにおけるサプリメントの市場は巨大だ。米国国立保健統計センターの最新の報告によると、2012年にはサプリメントに約130億ドル(約1兆3000億円)が消費され、なかでもグルコサミンは売れ筋のひとつだ。
日本でもドラックストアや通信販売でサプリメントは人気商品である。ところが、今回の研究結果は、グルコサミン人気に水を差すものとなった。
関節部位に直接ヒアルロン酸を注射するならまだしも、冷静に考えると、口から摂取して胃腸で消化されたグルコサミンが膝や股関節に浸透する――のだろうかという疑念は湧く。
グルコサミンで腹痛・頭痛・下痢・胸やけ
しかも、グルコサミンには副作用があるのをご存じだろうか? グルコサミンの副作用には、腹痛・頭痛・下痢・胸やけなどが公表されている。効かないばかりか、過剰摂取で健康を害する危険性さえある。
近年、「口から摂取するグルコサミンはほとんど効果がない」という研究報告は相次いでおり、医療業界では常識になりつつある。
たとえば、『Osteoarthritis and Cartilage(変形性関節症と軟骨)』(2009年)に掲載された変形性関節症のガイドラインには、「口から摂取するグルコサミンの効果はエビデンスに欠けるのでおすすめできない」と明記されている。
また、英国国立技術評価機構(NICE)も「痛みを改善する効果は期待できないだろう」と評価している。
すでに発表された研究の中には、グルコサミンを24週間摂取しても、MRIなどの画像に膝関節の構造上の変化(軟骨の再生や増大)は認められなかった――というものもある。
サプリメントや健康食品の業界は、毀誉褒貶の激しい世界だ。さまざまな新商品が登場する一方で、研究の結果、「効かない」という烙印を押されて消えゆくものも少なくない。
「テレビCMでガンガンやっている」「薬局でたくさん売っている」ということが、必ずしも「効果がある」というエビデンスとはならない。本当に効果・効能が明らかならば、医薬品として認められるであろう。
玉石混交の情報があふれる現代では、最新の知見にも目を配らせて、正しい情報を手に入れる<賢い消費者>でありたい。
(文=三木貴弘)