人工膝関節はQOLを大きく変える(depositphotos.com)
人工膝関節置換術は、変形した膝関節の表面を取り除き、人工膝関節に置き換える手術療法。治療部位の切開(侵襲)の程度を最小限に抑え、患者の身体への負担とストレスを軽減する最小侵襲術(MIS)だ。痛みの原因部位を除去するので、痛みを緩和・除去する効果が高く、歩行能力や脚力が改善され、QOL(生活の質)が向上する
膝関節は大腿骨(ふとももの骨)の末端と脛骨(すねの骨)の上端にある。健康な人の膝は、膝関節の軟骨が膝にかかる衝撃を和らげ、滑らかに動くクッションとして働くため、スムーズに歩いたり、自由自在に曲げたり、しゃがんだりできる。
しかし、膝関節は、加齢、肥満、外傷などによって変形するため、軟骨がすり減り、ひびが入って関節が変形する変形性膝関節症、関節リウマチ、外傷性関節炎を発症しやすい。軽症なら痛み止め、湿布、ヒアルロン酸の注射、リハビリ、装具の装着などで対処できるが、重症化すると人工膝関節置換術が行われる。
手術時間はおよそ1~2時間、入院期間は約1カ月
人工膝関節は、関節の滑らかな動きを再現するために、大腿骨部(だいたいこつぶ)、 脛骨部(けいこつぶ)、膝蓋骨部(しつがいこつぶ) の3つの部位から成っている。大腿骨部と脛骨部は金属製、脛骨部の上面と膝蓋骨の表面は、軟骨の代わりになる耐久性の高いポリエチレン製だ。
人工膝関節置換術の手術時間はおよそ1~2時間。感染予防のため、クリーンルームで施術する。術後約6週間で痛みやこわばりが解消し、杖を使った歩行、入浴、階段の昇降、畳に座る姿勢、トイレの動作などの日常生活動作(ADL)が可能になる。入院期間は約1カ月だ。
人工膝関節置換術は、国内で30年以上の実績があり、整形外科の標準治療法として定着、手術件数は年間8万件以上に上る(矢野経済研究所「2015年版メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析」)。社会保険庁のデータ(2008年)によれば、人工膝関節置換術を受ける患者の平均年齢は、約73歳と高齢化が著しい。